【抗体デザイン】抗体の計算機設計の性能を競うコンペティション AIntibody の紹介

論文タイトル

AIntibody: an experimentally validated in silico antibody discovery design challenge

出典

AIntibody: an experimentally validated in silico antibody discovery design challenge - Nature Biotechnology

要旨

抗体のデザインに特化したコンペティション AIntibody の開催 をリリースしたレポートです。

解説など

現在は様々なタンパク質の機能解析や設計に関するコンペティションが存在します。CASP はその中でも代表的なコンペで、タンパク質の構造予測を競うイベントです。これまでにも AlphaFold の性能を世に示す役割を果たしています。バインダー設計に通じるコンペティションですと、下記のようなイベントがありますが、低分子にフォーカスを当てたものが多いです。

  • CACHE (Critical Assessment of Computational Hit-finding  Experiments)
  • D3R (Drug Design Data Resource Grand Challenge)
  • SAMPL (Statical Assessment of Modeling of Proteins and Ligands)

本レポートでは、AIntibody という抗体デザインのコンペの開催を予告しています。著者には、つぎのようなバイオ企業やAI企業、製薬企業が名を連ねています。

  • バイオ企業
    • Specifica
    • Azenta
    • Carterra
    • Bonito Biosciences
    • GlobalBio
    • Sapidyne Instruments
  • AI企業
    • Evolutionary Scale
    • Profluent Bio
    • OpenEye
    • Cradle Bio
  • 製薬企業
    • Merck
    • Astrazeneca
    • Sanofi
    • Eli Lilly
    • Novo Nordisk
    • Takeda
    • Bayer
    • Incyte
    • Alloy Therapeutics
    • Mosaic Biosciences

コンペの形式は将来的に変わる可能性がありますが、主に Specifica で取得した抗体スクリーニング由来の NGS データを公開し、そのデータセットに基づいてコンペ参加者がバインダーのデザインを行います。評価用の遺伝子は Azenta で合成され、分析は Carterra の LSA-XT や Sapidyne Instrumentsの KinExA で実施されます。

そのほか、下記に示す物性情報も取得され、デザインの developability も評価されます。

  • HIC
  • HPLC
  • BVP
  • ELISA
  • AC-SINS
  • Tm
  • Tagg

参加者は$120/検体で運営側に評価を依頼することができます。データ提供から配列提出までは14日間です。この期間であれば実験的な検証に基づいて配列を提案することは不可能です。

初回のキャンペーンでは3つのタスクのコンペティションが開催される予定です。

Competition 1

このタスクでは抗体の親和性増強デザインの成績を競います。運営側が提供する SARS-CoV-2 抗原に対して酵母ディスプレイでパニングした ScFv ライブラリの抗体配列の NGS データから最適なバリアントを見つけることがお題です。デザイン対象は、HCDR1/2 と LCDR1/2/3 です。H3 と FRW は対象外となります。各 CDR 領域にまたがる組み合わせ改変も含めて、高活性かつ高い開発可能性を有する配列を探索する必要があります。

Competition 2

このタスクでは NGS のデータセットの中に含まれる抗体配列の中で最も高い親和性を示す検体を探します。Competition 1 と比べて Hit identification に近い問題設定である可能性が高いです。

Competition 3

このタスクでは Competition 2 のデータセットと同じ情報をもとに NGS のレパトアの中には存在しない高活性配列を見出します。