論文タイトル
AlphaFold and Docking Approaches for Antibody–Antigen and Other Targets: Insights From CAPRI Rounds 47–55
出典
要旨
CAPRI へのエントリ実績を報告した論文です。
解説など
CAPRI とは複合体モデルの構造予測性能を競うコンペティションです。本論文では米国メリーランド大学の Pierce ラボから CAPRI のコンペ参加実績を報告しています。筆者らのラボではこれまで Round 3からコンペに参加していますが、本論文ではその中で Round 47-55 の課題に含まれている 10 標的の構造予測実績を紹介しています。
彼らは Round 47-53 まで、主に以下の古典的な方法でモデリングを実施していました。
- ZDOCK 3.0.2
- M-ZDOCK
- Rosetta FastRelax with REF15 function
- ZRANK2
しかし、ここまでの検討で精度の高いモデルを提出できたのは Round53、Target188 の ZDOCK で予測したモデル1つのみでした。
そこで彼らは、Round 55 の Target 231-234 の4標的に対して AlphaFold2 を中心とした手法を取り入れたところ、うち Target 231 と 232 では精度の高いモデルを提出することに成功しました。この報告においてもこのTarget 231-234 の実績を中心に、構造予測の手順を紹介したり、レトロスペクティブにどのスコアリング方法が適切だったかを解析しています。
ここからは、AlphaFold2 を用いた基本的な構造予測手順について解説します。筆者らは複数のパラメータで多数のモデルを生成して、スコアに従って信頼性の高いモデルを選抜しています。変更する条件は、
- AlphaFoldのバージョン(v2.1, v2.2, v2.3)
- 鋳型構造の使用の有無
- recycle 数(3 ~ 21)
です。これらの組み合わせ計 11 条件で各条件に付きモデルを 25 個生成しています。モデルのフィルタリングは、Interface pLDDT を中心に使用しています。
特徴的なのは、各モデルにおける以下のスコアリング指標間の相関です。
- Model confidence
- Interface pLDDT
- ZRANK2
- DockQ
抗体-ペプチド複合体が標的となる Target 231 では、DockQ スコアと最も相関が高いのは pLDDT の値であったのに対して、抗体-ペプチドMHC複合体が標的となる Target 233 では、I-pLDDT や ZRANK2 は機能せず代わりに Model confidence との相関が高い結果が得られています。一方で同じく抗体-ペプチドMHC複合体が標的となる Target 234 では Model confidence と I-pLDDT ともに DockQ スコアと相関しなかったとのことで、高次構造レベルでの標的の差異に対しても明確な相関を示すことができていません。本文では、既存の AlphaFold-base metrics には改良の余地があると結ぶにとどまっています。