論文タイトル
AffinityFlow: Guided Flows for Antibody Affinity Maturation
出典
AffinityFlow: Guided Flows for Antibody Affinity Maturation
Antibodies are widely used as therapeutics, but their development requires costly affinity maturation, involving iterative mutations to enhance binding affinity...
要旨
抗体の親和性を増強する配列生成法 AffinityFlow を紹介した論文です。
解説など
カナダの MIla – ケベック AI 研究所からの報告です。筆者らは、抗体の親和性を増強する配列生成法を開発しています。彼らは、AlphaFlow を活用して構造と配列生成を逐次的に行うことで、親和性増強改変を探索するアプローチを採用しています。
具体的なプロセスは次のとおりです。
- 32xGGGGSで連携した抗体と抗原の配列を作成
- 対象配列をAlphaFlowに入力し構造を生成
- noisy → clean structure へ向かう流れ (flow) を作る
- このとき structure predictor を出力を参照して flow を調整する(predictor guidance)
- 構造を ProteinMPNN に入力し、対象のCDRに対して1 or 2 or 3変異が挿入された配列を生成
- あまり多くの変異を一度に入れないことが大事
- sequence predictor で生成された配列の結合エネルギーを予測し、高親和性が期待できる配列を選ぶ
- 2~4の流れを繰り返す(論文では3回)
筆者らは上記のプロセスで親和性増強改変を優先的に生成するために、structure predictor とsequence predictor を活用しています。各々の予測器の精度向上のため、Co-teaching というお互いに学習しあう仕組みを採用しています。これは以下のプロセスで進行します。
- GeoDock を使って、たくさんの抗体x抗原のドッキング構造モデルを生成
- RosettaでΔΔG を計算し、配列・構造と ΔΔG ペアのラベルデータを作成
- Sequence predictor / Structure predictor ペアラベルデータを予測
- ラベルデータと予測が一致していたら、そのデータを採用
- 信頼性の高いサンプルを学習に使う
- Sequence predictor が「信用できる」と判断したサンプルを Structure predictor の学習に使う
- Structure predictor が「信用できる」と判断したサンプルを Sequence predictor の学習に使う
本手法を重鎖抗体を対象としたテストデータに適用すると、下記の既存のモデルに比べてインシリコ指標で優れた配列が生成されることが示されています。
- ESM
- AbLang
- nanoBERT
- dWJS
- DIffAb
- AbDPO
- GearBind
意外なのは、生成されたバリアントの構造モデルは、野生型に比べてエピトープこそ変わらないものの、相互作用様式がやや回転していることです。これが事実であるかや実際に親和性が向上しているかはウェットのデータで今後示していく必要があります。コードは今後公開を予定しているとのことです。