論文タイトル
Prediction of aggregation in monoclonal antibodies from molecular surface curvature
出典

Prediction of aggregation in monoclonal antibodies from molecular surface curvature - Scientific Reports
Protein aggregation is one of the key challenges in the biopharmaceutical industry as its control is crucial in achieving long-term stability and efficacy of bi...
要旨
モノクローナル抗体(mAb)の凝集率を高精度で予測する新しい in silico 手法についての研究です。
解説など
手法の概要は、構造情報を含む特徴量と凝集率との相関を機械学習モデルで学習した、一般的なアプローチです。AlphaFold によるスナップショット構造だけでなく、MDシミュレーションにより時間平均や最大・最小時の情報を利用していることが特徴です。
- AlphaFold で mAb の可変領域(Fv)の 3D 構造予測
 - GROMACS で 100 ns の分子動力学(MD)シミュレーションを実行
 - 全フレームについて表面特徴量(電荷分布・疎水性)と局所的曲率を計算
 - 曲率と物性値を組み合わせた**新しい特徴量(ECM: Electrostatic Curvature Map, HCM: Hydrophobic Curvature Map)**を構築
 - 実験データ(20種類の mAb の高濃度凝集率)と線形回帰MLモデルで学習(LOOCV で検証)
 
本手法の最大の特徴は、その情報特徴量に「局所表面曲率」を採用している点にあります。一般にタンパク質表面の疎水性や荷電性を扱うことはよくありますが、本手法では露出しているかどうかだけでなく、その表面の局所形状(凸部・凹部・鞍点)や曲率(突起のなだらかさ)を参照しています。凹部よりも凸部の方が相互作用界面となりやすく、またなだらかである方が広い界面を形成できる可能性を考慮したアプローチです。
- Shape index (s) と Curvedness (c) を導入し、表面形状を「凸部・凹部・鞍点」などで定量化
 - 3種類の「ペナルティ関数」(P1, P2, P3)で異なる相互作用シナリオをモデル化
- P1:高曲率領域優先(強く凸状に飛び出した部分ほど他分子と接触しやすい)
 - P2:緩やかな凸面優先(完全な凸よりも、やや平坦で緩やかな凸面の方が他分子と広い面積でフィットしやすい)
 - P3:シグモイド型(ある程度の凸面までは会合しやすさが増すが、曲率が高すぎても効果は飽和する)
 
 - 計算は1 Å(原子レベル)、5 Å(残基レベル)、10 Å(残基+隣接残基)スケールで実施
 - 各特徴量はMDの時間平均・最大・最小・分散も考慮
 
本手法により、以下の結果が得られています。
- 最良モデルは線形回帰+3特徴量の組み合わせ
 - 相関係数 r = 0.91, R² = 0.82, MSE = 0.03(既存最高 r=0.86 を上回る)
 - 上位特徴量はすべて疎水性(HCM)ベースで、電荷(ECM)は影響が小さい
 
検証用のデータサイズが小さいことや、既存のモデルとの比較、MDシミュレーションの必要性への言及がないことが気になりますが、アプローチの一つとして参考になります。

  
  
  
  
