AIで設計する“タウ凝集阻害ナノボディ”:IDP標的抗体設計の新しいアプローチ

論文タイトル

AI-guided design and ex vivo validation of nanobodies targeting aggregation motifs of intrinsically disordered protein tau

出典

Just a moment...

要旨

タウタンパク質の凝集コアであるVQIVYKモチーフを標的に、物理モデルとAIを組み合わせてナノボディを設計し、in vitroおよびヒト脳組織で結合性を検証した研究です。

解説など

本研究は、「構造が固定されていないタンパク質(IDP:intrinsically disordered protein)」に対して、どのように抗体を設計するかという難題に挑んだものです。具体的には既存抗体の親和性を増強するという問題設定で、取り組んでいます。標的はIDPとして知られるタウタンパク質です。

大きく3ステップの設計戦略が取られています。

① ターゲット(VQIVYK)の構造理解

  • 分子動力学シミュレーション(MD)で100種類の構造をサンプリング
  • エネルギー分布も評価(653.15–809.62 kJ/molなど)

→ 低エネルギー構造を設計に利用する

→ 局所的な相互作用(Tyrとのπ相互作用、Lysとの静電相互作用など)をスコアリングで重視する方針を立案

② AIによるナノボディ設計

  • 既存のタウ結合ナノボディ(WIW scaffold)をテンプレートに
  • CDR3領域(抗原認識の中心部分)だけを設計対象に ProteinMPNN で145候補を生成
    • 入力構造が複合体モデルか、ナノボディ単体か不明
  • AlphaFold2で構造予測
  • HADDOCKでドッキング評価

③ スコアリングと選抜

  • 結合性(40%)
  • 安定性(30%)
  • 開発適性(30%)

を組み合わせた指標でランキング

結果

ELISAでのタウ結合評価では、

 - NT1:148.9%

 - NT2:140%

という結果が得られています(基準抗体を100%とした場合)。

また、ヒトアルツハイマー病脳組織での評価では、

 - NT1:236.1%

 - ポジティブコントロール:222.9%

とのことで、NT1がコントロールを上回る結合を示しています。

設計数も少なく効果も限定的ですが、知見の少ないIDPに対するバインダー設計の手順として参考になる文献です。