インテグリン非依存的にTie2を活性化するデノボ設計タンパク質の開発

論文タイトル

Integrin-independent Tie2 activation using de novo designed proteins

出典

Integrin-independent Tie2 activation using de novo designed proteins
The Angiopoietin–Tie2 pathway is a key regulator of vascular stability, but therapeutic exploitation has been limited by the poor developability of Angiopoietin...

要旨

本研究では、RFdiffusionを用いてTie2受容体に特異的に結合するデノボ設計ミニバインダー「Tmb1」を開発し、それを八量体化した「H8mb」を作製しました。H8mbはインテグリンα5β1に結合することなくTie2を強力に活性化し、マウスの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)モデルにおいて生存率改善効果を示しています。

解説など

Tie2は血管内皮細胞の安定化やバリア機能維持に重要な受容体です。天然リガンドであるAngiopoietin-1(Ang1)はTie2を活性化しますが、同時にα5β1インテグリンにも結合することが知られています。そのため、

  • Tie2活性化にインテグリン結合が本当に必要なのか
  • インテグリンはシグナル伝達にどのような役割を果たしているのか

を明確に切り分けることが困難でした。そこで著者らは、Tie2のみに結合し、インテグリンには結合しない人工タンパク質を設計することで、この問題を検証しようとしました。

研究チームは、

  • RFdiffusion
  • ProteinMPNN
  • AlphaFold2

を組み合わせた設計パイプラインを利用し、Tie2 細胞外ドメインに結合するミニバインダー候補を多数生成しました。デノボデザインとしては、標準的な手法を採用していますが、最初の設計に由来する2〜4ヘリックス構造では十分な界面を形成できなかった、とのことで、Secondary Structure / Adjacency Filesで 6 ~ 7 ヘリックスのバンドル構造を作り、Tie2 の β シート周辺を包み込むような構造を生成するという工夫を施している点が特徴的です。

その後、

  • 酵母ディスプレイによるスクリーニング :6ヒット
  • 飽和変異導入による最適化
  • SPR解析

を行い、最終的に「Tmb1」を選抜しました。

Tmb1 はヒト Tie2 に対して約1.6 nMの結合親和性を示しました。本文では、天然リガンドAng1の報告値(約3 nM)より高い親和性であると記載されています。さらにCryo-EM解析を行い、Tmb1がTie2のAng1結合部位に設計どおり結合していることを構造レベルで確認しました。

本文では、主にこの分子を活用したTie2シグナルメカニズムの解明に焦点を当てて論理が進行しています。デノボ設計タンパク質を研究ツールとして活用する事例は、今後さらに増えていくことが期待されます。