論文タイトル
Computational Design of Potential Binder Protein for SARS-CoV-2 Spike RBD through A Novel Deep Neural Network Based-Protein Outpainting Algorithm
出典

確認したいこと
- 深層学習を活用したタンパク質のデザイン手法
要旨
「Image Outpainting」の手法を利用して、タンパク質をデザインした報告です。
解説など
Image Outpaintingとは
以下の論文がImage Outpaintingの原著論文になります。
https://arxiv.org/pdf/1912.10960.pdfイメージ的には、対象画像にマッチした、外側周囲の画像を生成する技術です。
これは、対象画像内部の抜けやモザイクを修正する「Image Inpainting」を応用した手法になります。

この技術を結合タンパク質のデザインに適用したのが、「Protein Outpainting」です。
Protein Outpaintingとは
Protein Outpaintingにおける入力情報は、標的タンパク質と、それに結合するモチーフフラグメントの複合体構造です。これにProtein Outpaintingを適用することで、モチーフを中心にその周囲を補完するタンパク質をデザインすることができます。標的タンパク質に結合するモチーフ構造は保持しつつ、分子全体で安定的なタンパク質として存在することを意図した設計です。
SARS-CoV-2へ適用
本論文では、この技術をSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する分子のデザインに、応用しています。
SARS-CoV-2は言わずと知れた、COVID-19の原因ウイルスです。このウイルスはスパイクタンパク質を介してヒトのACE2タンパク質に結合することで、ACE2を発現した細胞に感染します。スパイクタンパク質とACE2との複合体構造は既知です。このスパイクタンパク質に結合するACE2の局所構造(19-42残基)を入力情報として、ACE2よりさらに親和性が高い分子をデザインすることを、本研究では試みています。
実施例の中では、50, 60, 70, 80, 90, 100アミノ酸の長さの分子をそれぞれデザインしています。結果としては100残基生成されたタンパク質が、最も標的モチーフによく似た構造であったとのことです。
本論文ではデザインしたタンパクのウェットでの評価は行われていません。深層学習に限らず、ホットスポットを中心にデザインする手法は実績が多いため、再現性は高いと感じます。
ホットスポットが既知である必要がありますので適用に制限を受けますが、注目に値する手法ではないでしょうか。
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