論文タイトル
De novo design of a fluorescence-activating β-barrel
出典
Nature. 2018 Sep;561(7724):485-491.

確認したいこと
- RIFドッキングの手法
要旨
低分子の結合に応答して蛍光を発するβバレルタンパク質を、de novoデザインした報告です。
解説など
本論文は、
- βバレル構造のde novoデザイン
- 低分子に対する結合ドメインのde novoデザイン
の2つを初めて達成した報告となります。
従って、タンパク質骨格となるβバレル構造のデザインと、そのβバレル構造に付与する低分子結合ドメインのデザインについて、順番に検証を進めています。
本記事では、低分子に対する結合ドメインのデザインにフォーカスして解説します。
手法
デザインは次の3ステップからなります。
- βバレル骨格のde novoデザイン
- 低分子結合ポケットの骨格構造への配置
- エネルギーに基づく配列選抜
本手法の1番の特徴は、2ステップ目のRIF(rotamer interaction field)ドッキングです。
従来の結合ポケットデザインでは、そのほとんどが、標的リガンドを結合ポケットに配置した後、ポケット周辺の配列を、構造安定化の観点から最適化する方法とっていました。この2段階アプローチは、後から最適化した周辺配列がリガンド結合に及ぼす影響を、十分に考慮に入れることができません。
RIFドッキングは、エネルギー的に強固な構造とリガンドとの相互作用を同時に考慮して配列をサンプリングする新しい手法です。
このメソッドにおいては、まず数十億個の不連続なアミノ酸側鎖の集合体を生成し、標的リガンドと水素結合および疎水性相互作用する側鎖セットを選抜します。次にグリッドベースの階層的な検索アルゴリズムを用いて、選抜した側鎖にスキャフォールドをドッキングします。
実際のβバレルデザインにおいては、このリガンド・スキャフォールドペアを2,102対選抜しています。
これらに対して、構造安定な配列を選択するために、以下のスキームでデザインしています。
- リガンド結合部位周辺に対する「リジッド」な骨格デザイン
- その他の領域に対する「フレキシブル」な骨格デザイン
- 複合体形成時のエネルギーに基づくモンテカルロシミュレーション
結果
本手法をもとに56種のデザインを大腸菌で発現させたところ、うち38種類のタンパク質はよく発現し、可溶性でした。また、その中の20種類はβシートタンパク質であったとのことです。
20個のモノマーデザインのうち、2個はKDが12.8, 49.8μMで標的低分子に応答して、蛍光シグナルを活性化することに成功しています。そのうえ、一部のデザインの結晶構造は、RMSD 0.57Åでデザインモデルと非常に近いことが判明しました。
本論文中では、さらなる配列最適化のために変異導入試験を実施した事例についても紹介されています。
追加調査したいこと
近年に報告されたRIFを活用したデザイン事例では、低分子量のタンパク質スキャフォールドを構築していました。相互作用モチーフのサンプリングには、このミニプロテインを生成できる大規模なライブラリが活用されているとのことで、詳細について確認してみたいと思っています。
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