論文タイトル
Computational design of an epitope-specific Keap1 binding antibody using hotspot residues grafting and CDR loop swapping
出典
Sci Rep. 2017 Jan 27;7:41306.

確認したいこと
深層学習を利用した、タンパク質構造予測・デザイン手法をベンチマークしています。
本論文は、デザインターゲットである抗体の基本的なエンジニアリング手法を参考にしたく、内容を確認しました。
要旨
標的抗原に結合するペプチドモチーフを抗体のCDRにグラフティングすることで、結合抗体デザインする手法を紹介した論文です。
解説など
抗体のエンジニアリングの長い歴史の中で、ホットスポットセントリックなインシリコデザイン手法は、多くありません。本研究はその数少ない事例の1つです。標的抗原はKeap1というタンパク質です。Keap1の天然リガンドであるNrf2の相互作用界面を、抗体のHCDR3にグラフティングすることで抗Keap1抗体の創成を試みています。
グラフティングの手法は単純ではなく、精緻な配列探索を行いながら、分子の最適化を行っている様子です。
パラトープペプチドの選定
Nrf2に含まれるKeap1結合界面から、2つの配列を選抜しています。どちらもヘアピンループ構造を有しているとのことです。CDRのグラフティングとの適合性も考慮に入れた選択になっていると思います。
抗体スキャフォールドの選定
“residue-based triplet hashing method”と呼ばれる方法で、スキャフォールドとなる鋳型抗体を選抜しています。探索するソースはSAbDabに含まれる1,417個の抗体構造です。このデータベースから、バックボーン残基のCα、C、Nの3つの原子で形成される構造をモチーフ単位として、グラフトとするペプチドと適合する構造を探索しているとのことです。
グラフティング
抗体スキャフォールドのVH94~VH102の残基を、パラトープペプチドに置換し、標的抗原とクラッシュしていないデザインを選抜しています。
配列の最適化
抗体配列の最適化にはRosettaDesignを用いています。デザインのスコアリングには、
- 結合エネルギー(RosettaΔGスコア)
- 溶媒接触面積(SASA)
- 形状相補性(Sc)スコア
が利用されています。
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