【量子コンピュータ】GNNモデルを用いたタンパク質デザインを量子コンピュータで実現?

論文タイトル

XENet: Using a new graph convolution to accelerate the timeline for protein design on quantum computers

出典

PLoS Comput Biol. 2021 Sep 27;17(9):e1009037

XENet: Using a new graph convolution to accelerate the timeline for protein design on quantum computers - PubMed
Graph representations are traditionally used to represent protein structures in sequence design protocols in which the protein backbone conformation is known. T...

確認したいこと

量子力学を利用した分子シミュレーションの実現には、量子コンピュータの適応が1つの解決策として期待されています。量子コンピュータをタンパク質デザインに応用した事例について、ベンチマークするため、文献調査を実施しました。

要旨

タンパク質の構造予測問題に対して、量子コンピュータによる解決に適した手法を提案し、コンセプトを検証しています。

解説など

タンパク質の精緻な構造予測における計算量限界の課題を、量子コンピュータで解決したい、というのが本論文の目的になります。実際にタンパク質構造予測問題を、量子アニーリングマシンで解けるかコンセプト検証が行われた事例があります。

Just a moment...

一方で、現在開発されているゲート型の量子コンピュータでは、多数の量子ビット数で計算することは困難でした。量子コンピュータをタンパク質の構造予測に応用に向けて、量子コンピュータのハードウェア側の開発を待たずに短期的にこの問題を解決するためには、やはり不要な候補を除去し、効率的に探索する手法が必要不可欠です。

タンパク質構造予測における重要なステップとして、ロータマー探索問題があります。タンパク質上で、アミノ酸が連なる際の配向は、離散的な回転異性体群(ロータマー)の中のいずれかを取るため、安定構造を予測するためには、環境に適したロータマーを探索する必要があります。

量子コンピュータでは、情報を量子ビットの状態で表現します。したがって、最適なロータマー状態を量子ビットで表現することができれば、タンパク質構造予測問題も量子コンピュータで解くことも可能になります。

最適なロータマーを効率的に探索するために、機械学習を用いることを、本論文では試みています。筆者らは、機械学習の中でもグラフニューラルネットワークを用いた手法にフォーカスを当てています。

ニューラルネットワークモデルのベンチマーク技術として、CrystalConvと呼ばれる手法があります。この手法の課題は、以下のとおりです。

  • 非対称なエッジ属性をもつグラフを考慮に入れることができない
  • ネットワーク全体を通して、エッジ属性を更新するように設計されていない

この双方の課題を解決し、タンパク質の構造予測に適応できるモデルとして、筆者らは新しいGNNモデルであるXENetを開発した、というのが研究背景の概要です。

実際に、量子アニーリングマシンを用いたユースケースとして、10残基程度の構造に対してモデルによる予測を適用し、その概念検証を行っています。現時点では、まだ利用可能な量子コンピュータのスペックには限界があり、コンセプト検証にとどまる事例に限られますが、ハードウェアの開発が伴うことでさらなる適応が期待されます。

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