論文タイトル
De novo design and Rosetta-based assessment of high-affinity antibody variable regions (Fv) against the SARS-CoV-2 spike receptor binding domain (RBD)
出典
Proteins. 2022 Sep 16. doi: 10.1002/prot.26422.

確認したいこと
OptMAVEn-2.0は、結合抗体のインシリコデザインツールです。過去の記事で紹介しました。
OptMAVEn-2.0を使った新たな抗体デザインの実施例を見つけたので紹介してみたいと思います。
要旨
OptMAVEn-2.0を用いた抗体デザインの実施例として、SARS-CoV-2 RBDに対する結合抗体の取得事例を紹介しています。
解説など
既往のOptMAV(またはOptCDR)の実施例では、短鎖ペプチドに対するバインダーデザイン、または変異体デザインによる親和性増強が中心でした。一方で本論文では、フォールディングタンパクに対するバインダーデザインを試みています。デザイン配列に対して、ウェットの検証結果はなく、シミュレーション結果を用いた考察にとどまっています。
過去のOptMAV適応事例


本実施例では、おおざっばに以下の手順でデザインをおこなっています。
- 抗原エピトープ残基の定義
- 抗原ポーズの生成
- 抗原に適合するジャームライン配列の探索
- 親和性増強
以下でもう少し詳しく各ステップについて解説します。
まず初めにエピトープとなる抗原領域を定義しています。RBDは、ヒトのACE2タンパクに結合して感染を引き起こすことが知られています。そこで、STRIDEという解析ツールを使用して、RBDのhACE2結合領域に存在する溶媒露出領域を同定しています。

つぎに、OptMAVEn-2.0から、抗原のポーズを3,234個生成しています。このポーズそれぞれに適合する、VDJの組み合わせを探索しています。結果的に173個の抗原ポーズのみ、クラッシュのない抗原・抗体複合体構造を生成できたとのことです。
これら173個のポーズを、Rosetta binding energyで比較し、最も優れたトップ5検体を選抜しています。
さらに、5検体に対して、Rosetta-based in silico affinity maturationを適用することで、各検体の親和性増強を試みています。最終的に計106個のバリアントをデザインしていました。デザインされた配列は、以下の評価がおこなわれています。
- H-Score
- Rosetta binding energy
- DeepAbによる構造モデリング
DeepAbとデザイン構造との一致度は、パリアントによって、まちまちであったそうです。ペブチド抗原以外での適用事例が増えると、抗体デザインの現実味が増すため、ウェットでの評価が期待されます。
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