論文タイトル
Motif-Driven Design of Protein-Protein Interfaces
出典

Methods Mol Biol. 2016;1414:285-304.
確認したいこと
Rosettaの使い方を学習できるコンテンツを作成しました。引き続きコンテンツを拡充するために学習中です。
要旨
本論文は、標的タンパク質に対して結合するバインダーペプチドを、スキャフォールドへグラフティングする工程について、Rosettaで実行する手法を解説した論文です。そのために、”MotifGraft mover”と呼ばれる実行コマンドを使用しています。
解説など
インシリコでのバインダーデザインは、以下の手順で実行されます。
- 結合界面ペプチドのデザイン
- スキャフォールドのデザイン
- 結合界面ペプチドをスキャフォールドにグラフティング
- 配列デザイン
本論文では、結合界面ペプチドには、標的タンパク質に対して結合することが知られている天然のペプチドモチーフを利用しています。したがって、その配列をスタートに、2番目以降の工程を実施する方法になります。
スキャフォールドを探索するために、PDBから1,519種類の適した構造をライブラリとして用意しています。具体的には以下の性質をもつタンパク質群を集めています。
- 高解像度の構造データ
- 大腸菌での発現実績あり
- 一本鎖
- 天然のリガンドに結合する性質をもたない
次は、これらのスキャフォールド群から、モチーフをグラフティングできる領域を探すことになります。もし、スキャフォールドの一部がモチーフと非常に近い構造を持つ場合(RMSD < 0.5Å)、単純にその領域にモチーフを移植すればよいことになります。これを”side chain grafting”と呼びます。
一方で、そのようなスキャフォールドが見つからない場合は、”backbone grafting”と呼ばれる別のアプローチをとることになります。これは、モチーフの両端に相同性の高い領域にフォーカスをあてます。そのような領域をスキャフォールドから見つけて、その場所にモチーフを移植します。モチーフの全長を模している必要がない分、探索で見つかる可能性が高まり、より汎用性の高いアプローチになります。
グラフティング後は、モチーフを含めて配列をデザインする流れです。side chain grafting/backbone graftingともに、複数のmoverコマンドを組み合わせて、制限をかけながら配列をデザインしていきます。使用されている実行コマンドを挙げると下記の通りになります。
- ProteinInterfaceDesign
- SelectBySASA
- RestrictToRepackingRLT
- PreventRepackingRLT
- MotifGraftmover
- Ala pose_mover
- Prepack mover
- PackRotamersMover
- MinMover
最後は生成した配列をいくつかの基準を設けてフィルタリングします。フィルタリング指標は下記の通りになります。
- 結合エネルギー (ΔΔG)
- 結合界面の相補性
- 結合界面における水素結合に関与する原子
これらの工程を実行するために、本論文ではRosettaScriptsとそれを実行するためのコード例を提供しています。RosettaScriptsには、上記の手順が記述されています。各コマンドに対して様々なオプションが使用されていますが、その内容は本文できちんと解説されています。
理論だけではなくて、実装手順まできちんと説明があるので、ツールを活用したい人にとっては、とても参考になるドキュメントです。ぜひ本文を読んでみることをお勧めします。
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