論文タイトル
De novo design of helical bundles as models for understanding protein folding and function
出典

Acc Chem Res. 2000 Nov;33(11):745-54.
確認したいこと
先日、タンパク質のデノボデザインの関する手法の一つとして、Rational protein designというカテゴリについて紹介しました。
本記事では、Rational proteing designの項で引用されていた、代表的な論文を紹介したいと思います。
要旨
ヘリックス構造を事例に熱力学的な視点をメインに、構造決定に重要な原理を解説したレビュー論文です。
章立て
- 構造特異性
- 自由エネルギーギャップの決定因子
- 極性の溶媒露出残基がα2Dの天然構造に重要である
- ヒスチジン残基の水素結合クラスターがα2Dの天然二量体構造に重要である
- タンパク質デザインにおける階層的な原理
- 構造から機能へ:メタロプロテインのデザイン
- 結言
解説など
先日の記事で、Rational protein designとは、「特異的な配列・構造関係を考慮してデザインする手法」であると述べました。「特異的」とはその状況に特有の現象・効果の意味であり、特定の構造集団における配列と構造の関係性を考察してデザインする手法がRational protein designです。
本論文ではヘリックス、特に2量体型の4ヘリックスバンドルであるα2の構造に焦点を当てて、その構造安定化に重要な残基やその役割(非最安定構造の不安定化など)を紹介しています。
筆者らは、論文の冒頭で立体配座特異性(conformational specificity)という言葉を定義しています。これはシンプルにタンパク質のフォールディングのしやすさを意味します。特定の最安定な構造がとりやすいほど、その構造しか取り得ないという意味での特異性が増すことになります。
デザインするときに目標とする構造(または天然構造)がエネルギー的に安定化されると、特異性が増すことになります。また非天然構造状態を不安定化することでも、エネルギー障壁が大きくなるので、同じく特異性が増すことになります。
Rational protein designでは Minimal protein designのような経験則からの考察だけではなく、このような熱力学的な効果を、部位特異的変異導入による試験などから考察している点が特徴です。
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