論文タイトル
Split Green Fluorescent Proteins: Scope, Limitations, and Outlook
出典
Annu Rev Biophys. 2019 May 6;48:19-44.

確認したいこと
先日はスプリットタンパク質のレビュー論文を紹介しました。
本日は、スプリットGFPに特化した論文を紹介します。
要旨
蛍光タンパク質のスプリット化について、言及した総説です。
用語
BiFC: Bimolecular fluorescence complementation
章立て
- 緒言
- リボヌクレアーゼS:最初のスプリットタンパク質
 - スプリットタンパク質の一般的な特徴と目的
 - 非蛍光スプリットタンパク質と、タンパク質フラグメント補完アッセイ
 
 - 緑色傾向タンパク質
- GFPの構造、クロモソーム成熟、光物理化学的特性
 - 循環置換とGFPのエンジニアリング
 
 - スプリット蛍光タンパク質と、タンパク質間相互作用の検出
- オリジナルデザイン
 - 生体分子の蛍光補完法 (BiFC)
 - BiFCの限界を超える取り組み
 - スプリットGFPセンサの応用範囲を広げる
 
 - スプリットGFPを用いた光化学・物理化学性の検証
- スプリットGFPのインビトロ検証
 - GFPの人為的制御
 - スプリットGFPの光化学性 – 現象
 - スプリットGFPの光化学性 – メカニズム
 
 - 結言と展望
 
解説など
本論文は、先日に引き続きスプリットタンパク質に関する総説です。
本レビューの特徴は、蛍光タンパク質のスプリット化に特化した内容であることと、そのシステムの課題や解決策について言及している点にあります。
GFPのエンジニアリングにおける大きな特徴は、循環置換を行うことができるということです。天然のGFPにおけるN末端とC末端は近接しており、この領域をつないで、別のポジションを切断しても、GFPの蛍光活性を保つことができます。これはタンパク質のエンジニアリングに柔軟性があることを示しています。
スプリットタンパク質を工学応用する場合に必要な基本的な性質は、以下の2つです。
- スプリットされたどちらか一方のフラグメント単独では活性を示さない
 - 再構成により活性が回復する
 
どちらも当然のことではありますが、単純に分割すればよいわけではなく、機能ドメインを分割しなければならないことと、分割したフラグメントどうしで、再構成できる界面をデザインしなければならないことは、エンジニアリングにおいて大きな制限となります。
現存するBiFcの課題は、具体的に以下3点が挙げられます。
- 再構成された蛍光タンパク質の解離速度は遅いため、時間依存的な変化を検出しづらい
 - 相互作用イベントと、蛍光の回復に時間差がある
 - フラグメントタンパク質の非特異的な結合
 
このような知見から、これまで多くの研究が、
- 不可逆的な相補性
 - 低感度
 - 分裂フラグメントの非特異的な自己集合
 
の改善に向けられているとのことです。本文中には具体的な検証事例が紹介されていますが、いずれも地道なタンパク質エンジニアリングにより、ベンチマークとなる親配列の活性を指標に最適化しています。
スプリットタンパク質の汎用的なエンジニアリングストラテジーの確立が望まれるところです。

  
  
  
  

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