【バインダーデザイン】光で結合活性を制御できるDARPinを計算機デザイン

論文タイトル

Photoswitchable binders enable temporal dissection of endogenous protein function

出典

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.09.14.557687v1

要旨

光でバインダーの結合活性を制御する、タンパク質スイッチシステムを報告しています。

解説など

光でタンパク質の機能を制御するメカニズムとして、筆者らが採用したのが、pdDronpa というタンパク質の機能です。このタンパク質は、バイオレット光を浴びると2量体を形成し、シアン光を浴びると2量体が解離します。

筆者らは、このpdDronpaの2分子の間にバインダー(DARPin)を融合することで、pdDronpa の2量体化を阻害したときのみ、マスクが解かれて DARPin の結合活性が回復システムを開発しました。

これまで報告のあった光応答システムは、アロステリックな構造変化でタンパク質の機能を制御することが多かったのですが、本システムは DARPin のパラトープマスクを制御するシステムになります。これにより、デザインの手を入れることが困難な、精密な構造変化を対象にしなくて済むのが特徴です。

一般的なDARPinのトポロジーは、N末とC末が同じ方向を向いていて、pdDronpaで挟んでもパラトープをマスクできません。そこで筆者らは新しいヘリックスをC末側に追加して、N末とC末の局在を逆方向にしたうえで、pdDronpa を融合するデザイン上の工夫を施しています。

新規ヘリックスのデザインには、RosettaRemodelを使用して、様々なループおよびヘリックス長をもつデザインを生成しています。手動でのキュレーションを経て18デザインを実験に供して、最適なデザインを同定しています。

本システムの応用例として、細胞内シグナル伝達タンパク質の1つであるERKの光制御を紹介しています。

人為的に2量化を誘導するシステムには様々な報告がありますので、光誘導以外の様々な仕組みに発展できる可能性があるコンセプトだと感じました。