論文タイトル
Blueprinting extendable nanomaterials with standardized protein blocks
出典

要旨
コイルド構造の連続的な配置により、規則性のある巨大タンパク質複合体をデザインした事例です。
解説など
David Baker ラボからのレポートです。プレプリント版は昨年の6月に公開されており、先日 Nature にも掲載されました。マクロな視点でのプロテインエンジニアリング事例で、単純なモジュールの組み合わせで巨大な構造体を構築するアプローチになります。
既存のナノマテリアルデザイン事例


上記で示したこれまでのデザインは、構成モジュールの構造が複雑であるため、特定の構造体(例えばC3, C5環状体などの特定の対称性を示す構造体)にしか応用できず、拡張性のある自由なデザインが難しい、という課題がありました。モジュールの連結に基づいて自由度の高い構造体を作るには、連結する際に生じるモジュール間のねじれ角をとても厳密に制御することが必要です。例えば、屈曲を生じずに 0°に制御できれば、リニアな形状を保ったまま構造体を延長させることができますし、90°に制御できれば、直角なカーブを形成し、直方体を作ることができます。
筆者らは本論文で、コイルドコイル構造をモジュールとして活用して、ねじれ角を制御できる分子のデザインを試みています。デザインには Rosetta とツール内に実装された各種 Mover を活用しています。具体的には、まず連結する2つのモジュール間の位置(a0/a1)を定めます。次にBundleGridSampler movers を利用して、2点間の距離内にヘリックスバンドルを敷き詰めます。モジュールの安定性を高めるために、パッキングを重要視して多くのヘリックスを詰めることが大事です。次にConnectChainsMoverで、コイルドコイルモジュール間をループで接続します。繰り返し構造を連続的にデザインするには、RepeatPropagationMover を活用します。
デザインした構造は、Rosetta FastDesign または ProteinMPNN で配列設計します。
検討の結果から、a0/a1間の距離は、8.5~11.5 Å が許容値で、10.5 Å 付近が最適とのことです。筆者らは、このモジュールで、環状構造、ケージ型の構造、ファイバー構造などをデザインしています。各構造体は電顕で望みの構造が構築されていることを確認しており、きれいな構造体が形成されていることが示されています。
デザインのコードは、こちらにありますのでご参照ください。