論文タイトル
De novo design of pH-responsive self-assembling helical protein filaments
出典

要旨
pH依存的にフィラメント形成を誘導するヘリカルタンパク質をデノボデザインした事例です。
解説など
pH応答性タンパク質のデザインには、ヒスチジン導入が一般的な方法です。結合界面にヒスチジンを導入することでpH依存的に結合活性を変化させたり、コア残基に導入することでタンパク質全体のフォールディングを制御することができます。
この論文では、より高度な構造形成制御を目指して、pH依存的に繊維状のタンパク質複合体を構成するタンパク質をデザインすることを試みています。
デザインのアプローチは、フィラメントタンパク質をデザインする下記の方法をベースにしています。

この方法では、単量体タンパク質から自己組織化するフィラメントタンパク質をデザインすることができます。このアプローチでデザイン対象となる鋳型タンパク質にpRO-2.3 (PDB ID: 6MSQ) というpH依存的に構造変化を引き起こすデノボデザインタンパク質を利用します。あとはフィラメントタンパク質デザインの手法に従って分子デザインするだけです。
計45,000 個のヘリカルフィラメント構造を生成して、各デザインに対してフィラメント形成エネルギーを計算することで、ウェット試験に進める18デザインを選抜しています。うち2つのデザインは、実際にフィラメントを形成することができたとのことです。
さらにpH応答を示すpH閾値を変化させるために、このデザインに対してさらに3つのヒスチジン残基を導入することも試みています。これにより、より低いpHで鋭敏に応答する分子を設計することに成功しています。
今回はpH応答性の分子デザインの実施例でしたが、このような事例が存在することからも元のフィラメントデザイン手法がかなり汎用的に活用できることが示唆されます。