論文タイトル
Controlling semiconductor growth with structured de novo protein interfaces
出典

要旨
ZnO (酸化亜鉛) に結合するバイオマテリアルを計算機でデザインした報告です。
解説など
本論文はこちら↓のレポートからの続報です。

目的は、特定の無機物を吸着するバイオナノマテリアルを作製する、というモチベーションをもとに、無機物に結合するタンパク質性の結合モチーフを探索することです。
これまではファージディスプレイで結合モチーフを探索する方法が主流で、およそ 8 – 12 のペプチド長の配列が探索された実施例が過去にありますが、活性としては不十分であったとのことです。より活性の高い分子を同定するために、50アミノ酸残基程度の広い配列空間の中から探索したい、そしてそれを実現するために効率的な配列探索アプローチが必要だ、という背景があります。
筆者らは、無機物との相互作用界面をデザインするために、以下の3つの要素が必要であると仮説を立てました。
- 周期的な電荷相補性が必要(例: DNAなど)
- 配位結合における「部分的配位」が結合に重要
- 秩序だった水分子層が無機物の吸着を促進する
この仮説のもとに、筆者らが考案した次のデザインアプローチを試みました。
- 上記仮説に見合ったスキャフォールドを選抜
- 各スキャフォールドに対して4つの配列、2つの表面領域、23のアミノ酸組成を組み合わせた、およそ7,000配列のライブラリを設計
選抜したスキャフォールドは、
- ヘリカルリピート(11種)
- α-β(6種)
- βソレノイド(19種)
です。
標的は ZnO で、この分子に結合するデザインを酵母ディスプレイでスクリーニングしています。具体的にはフローサイトメーターで ZnO 結合酵母を検出すると側方散乱光(SSC)の強度が増すことを指標に、バインダーをソーティングすることで、実際に活性のある分子を見出すことに成功しています。
ミクロな機能モチーフの同定は、ライブラリー技術や計算機設計でできることを考えると、
- 大目的を満たすスキャフォールド構造選択の仮説立て
- デザイン分子のウェット評価系構築
などのセンスが、研究員に求められるスキルだと感じました。