【ペプチドバインダーデザイン】拡散モデルを活用した多目的最適なペプチドバインダーの設計手法 PepTune とは

論文タイトル

PepTune: De Novo Generation of Therapeutic Peptides with Multi-Objective-Guided Discrete Diffusion

出典

PepTune: De Novo Generation of Therapeutic Peptides with Multi-Objective-Guided Discrete Diffusion
Peptide therapeutics, a major class of medicines, have achieved remarkable success across diseases such as diabetes and cancer, with landmark examples such as G...

要旨

ペプチドバインダーのデノボデザイン手法 PepTune を公開した論文です。

解説など

デューク大学からの報告です。筆者らは、ペプチドバインダーのデノボデザイン手法 PepTune を開発しました。

もともとペプチドバインダーのデノボデザインでは、構造ベースの生成モデルとして RFDiffusion を改良した RFpeptides や、言語モデルベースの PepPrCLIP、PEPLML などが世の中に存在していましたが、いずれも天然アミノ酸で構成されたペプチドしか生成できない、という課題がありました。これに対して筆者らが開発した PepTune では、非天然アミノ酸を導入したペプチドや環状ペプチドを生成することが可能です。

PepTune には、手法的に大きく以下の5つの特徴があります。

  • Masked Diffusion Language Model (MDML) フレームワークを使用
  • Bond-Dependent Masking Schedule によりマスク除去を高速化
  • Global Sequence Invalid Loss を採用し、期待値の低いペプチド配列に直接的に制約を与える
  • Monte Carlo Tree Search を採用し、多目的最適化に活用
  • 治療薬としての多様な評価指標に対する分類・回帰モデルを提供

ペプチド創薬では、標的抗原への結合活性や可溶性だけでなく、膜透過性などの性質を有することが求められるので、複数の目的に適合した構造を生成できる手法は非常に魅力があります。

PepTune を用いて、筆者らは以下の標的抗原に対するバインダーの生成を実施例に掲載しています。

  • GLP-1R
  • TfR
  • GFAP
  • NCAM1
  • AMHR2

いずれもウェットでの検証結果はないものの、AutoDock Vina による相互作用エネルギーの算出で、既存のバインダーに匹敵する相互作用強度を示しています。また GFAP/NCAM1/AMHR2 は既知のバインダーが知られていない標的であることから、PepTune の汎用性が示唆されました。

彼らはさらに、TFR と GLAST や、GFAP と E3 Ubiquitin Ligase という2 種類のタンパク質に結合する Dual-Target バインダーの生成も試みています。これは PepTune が明示的に多目的な分子を設計できることを活用した応用事例です。応用範囲の広い技術で、多様な活用が期待されます。