論文タイトル
Crowdsourced Protein Design: Lessons From the Adaptyv EGFR Binder Competition
出典
要旨
タンパク質のデザインコンペの結果報告です。
解説など
Adaptyv Bio はスイスにあるタンパク質デザインに関連するクラウドラボサービスを提供するスタートアップです。2024年からバインダーデザインのコンペティションを2回開催しています。いずれもEGFRを標的としたバインダー設計をゴールに設定したコンペで、配列の提出条件は以下のとおりです。
- 1本鎖(scFvやナノボディなどを含む)
- 200アミノ酸(Round1)/250アミノ酸(Round2)以内
- 既知のバインダーと最低10残基以上異なる
参加チームから提出された配列は以下の基準で選抜されます。
- Round1: AlphaFold2-MultimerによるiPAEスコア(結合界面の予測エラー)
- Round2: iPAE + ipTM + ESM2の対数尤度の合算(Borda count)
その後、無細胞翻訳系で発現しBLIで抗原結合親和性を測定する流れです。
全体の成績は下記のとおりです。
- Round1
- 提出:726
- インシリコ選抜:201 (100 high metrics + 101 diversity)
- 発現 ○:146
- 結合 ○:5
- Round2
- 提出:1131
- インシリコ選抜:400 (100 high metrics + 300 diversity)
- 発現 ○:378
- 結合 ○:53
Round2 の方が良い成績に見えます。Round2 の時点で ProteinMPNN の soluble weight が使えるようになったり、インシリコでのフィルタリング指標として SoluProt, NetSolP などの使用率が増したことが貢献した可能性があります。一方でRound1の全体成績を参考にしたり、提出配列を最適化することでヒットレートが高くなった可能性も否定できません。
Round2 でコンペで良い成績を収めたのは、Cradle Bio のチームです。彼らはセツキシマブの配列を鋳型にscFvにフォーマットを変換し、そのフレームワーク配列を最適化することで抗原親和性を鋳型から8.2倍向上させました。

Adaptyv Bio は、タンパク質デザインのベンチマークプラットフォームとして、BenchBB プロジェクトを推進しています。これは下記に示す7つの標的に対してタンパク質設計手法をベンチマークするもので、Adaptyv Bio ではこれらの標的に対してバインダーを評価するサービスを提供しています。リコンビナントとして調製が容易であり、ポジティブコントロールも存在する標的が選抜されているので、モデル選抜の選択肢として参考にするとよいでしょう。
- PD-L1
- EGFR
- IL7Ta
- BHRF1
- SpCas9
- BBF-14
- MBP