論文タイトル
Boltzdesign1: Inverting All-Atom Structure Prediction Model for Generalized Biomolecular Binder Design
出典

要旨
全原子予測モデルを活用したバインダー設計手法 Boltzdesign1を紹介した論文です。
解説など
深層学習モデルの構造生成手法には、
- 既存の構造予測モデルをファインチューニングして活用するアプローチ
- 構造予測予測モデルをそのまま活用して、メトリクスに基づき配列を逐次進化するアプローチ
の2つが存在します。①はRFDiffusionがその代表で、②は種々のモデルを活用した hallucination や BindCraft などが該当します。
②のアプローチは、初期構造・配列の設定に課題がありますが、その分以下のような特徴や利点があります。
- モデルの再訓練が不要である
- 損失関数をカスタマイズすることで多様な分子最適化に活用できる
- 複合体の相互作用に伴う構造変化を考慮することができる
筆者らが開発した構造生成手法では、この②のアプローチを採用しています。
近年 AlphaFold3 や RosettaFoldAA を筆頭に非タンパク質性の分子との複合体構造を予測するモデルが公開されています。筆者らはその一つである Boltz-1を活用し、非タンパク質性分子に結合するバインダーをハルシネーションアプローチで設計する手法 Boltzdesign1 を開発しました。
この目的を達成するうえで課題となってくるのは計算コストです。 Boltz-1 を含む全原子予測モデルはその構造生成に拡散モデルを活用していますが、これにより計算が非常に高コストになります。筆者らはこれを解決するために、モデルの Pairformer のみを利用する工夫を行いました。また、多様性の高い構造を生成するために、予測構造座標ではなく、その背後にある “distogram (原子間距離分布)” を活用しています。
筆者らは、Boltzdesign1を次の標的に対して適用してバインダーの設計を試みています。
小分子 | IAI, FAD, SAM, OQO |
金属 | Zn²⁺, Fe²⁺ |
核酸 | B-DNA |
翻訳後修飾タンパク質 | PCNA (Y211-P), Smad2 (S201/203-P), CD45 (N-glycosylation at D101) |
結果はいずれも計算機上のもののみで、ウェット実験に基づく検証結果はありませんが、小分子標的の事例で、RfDiffusionAA よりも高い成功率と構造多様性が観察されています。