論文タイトル
Poxvirus targeted by RFdiffusion peptide-binders
出典
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要約
ポックスウイルス(特にワクチニアウイルス〔VACV〕やサル痘ウイルス〔MPXV〕)の主要膜タンパク質 F13L を標的に、RFdiffusion を用いて新規ペプチド阻害剤を計算設計した研究です。
解説など
RFdiffusion を用いたリニアペプチドの設計事例の紹介です。単純な短鎖線形ペプチドを設計した事例紹介は少ないためアプローチが気になり、目を通しました。結論としては、設計成功の実験的な証明がなく、手法の妥当性を判断するには物足りない印象です。
筆者らは、ポックスウイルス由来の膜タンパク質 F13L に対してバインダーの設計を試みています。エピトープはF13が形成する2量体界面のαヘリックス構造です。
- 構造準備
- F13L ホモ二量体構造から chainB を削除し、chainA をターゲットとする
- 二量体界面の接触残基(5.5Å以内)を抽出し、短・長・最長ホットスポットに分類
- RFdiffusion 設計
- Google Colab 上の RFdiffusion notebook を用い、βシートや可溶性ペプチド優先条件を設定
- 20〜30残基のペプチド、または二本組み合わせたジペプチド(例:25-mer + 20-mer)をランダム生成(全576配列)
- 出力構造を AlphaFold2 で再モデリング後、Prodigy で chainA との推定親和性を評価
- 上位候補選定
- Prodigy 予測親和性 ≤ 46 nM かつ二量体界面αヘリックスに結合する配列を選択(9種、全体の1.5%)
- 親和性・安定性向上
- 上位ジペプチドの一つ 16.9n2(25-mer+20-mer, ~6 nM) を基に、
- N–C 末端シクロ化(9n2c): バックボーン固定のまま配列変化
- シクロ化+ハルシネーション(9n2a): バックボーンも再設計+内部ジスルフィド結合導入
- 再び AlphaFold2 モデル化+Prodigy評価
- 上位ジペプチドの一つ 16.9n2(25-mer+20-mer, ~6 nM) を基に、
- 耐性株評価
- MPXV 野生型(F13L0)および Tecovirimat 耐性株(F13L1, F13L2)モデルに結合させ親和性を比較
特徴的なのは、ホットスポットの指定残基が非常に多いことです。長(8残基)や最長(34残基)の条件を選択しており、これにより結合界面の広い高親和性のバインダーを取得できることを期待しています。
また、2本鎖のペプチドを生成して2本鎖間にジスルフィドを生成する、という設計も試みています。


