論文タイトル
Differential performance of RoseTTAFold in antibody modeling
出典
Brief Bioinform. 2022 May 23;bbac152.

確認したいこと
- 深層学習を用いた抗体構造予測モデリング手法の実績
要旨
タンパク質構造予測のための深層学習モデルRoseTTAFoldを、抗体の構造予測に適応したときの予測精度を、従来のホモロジーモデリング手法と比較しています。
解説など
本論文では、RoseTTAFoldを抗体の構造予測に適応したときの、予測精度を評価しています。
RoseTTAFoldはAlphaFoldと同じく深層学習を利用したタンパク質構造予測手法です。1Dの配列アライメント情報、2Dの残基間距離マップ、3Dの原子座標をそれぞれ予測する3トラックネットワークでモデルを作成することが特徴です。
本論文では、このRoseTTAFoldと精度比較する従来モデルとして、以下を対象としています。
- SWISS-MODEL
- AbodyBuilder
これらは、どちらもホモロジーモデリングをベースとした構造予測手法です。SWISS-MODELはUniprotなどの外部データをリポジトリとして、様々なタンパク質に汎用的に利用できるツールです。一方でAbodyBuilderは、抗体に特化したモデリングツールで、その鋳型配列にSAbDabのデータベースを活用しています。
本論文では、様々なデータセットを対象に精度比較が行われていますが、一貫してGMQEスコア(ホモロジーモデルにおいて選抜された鋳型構造と標的構造の類似性)が高いケースでは、ホモロジーモデルの予測精度の方が高く、GMQEスコアが低いケースでは、RoseTTAFoldの方が精度が高い、という結果でした。
CDRのループ単位でみていくと、ホモロジーモデルで予測の困難なH3においては、SWISS-MODELに対しては有意な差が確認できなかったものの、ABodyBuilderと比べるとRoseTTAFoldの方が正確なモデルを作成することができたそうです。
RoseTTAFoldの現状の課題としては、以下が挙げられています。
- 単量体タンパク質を主に訓練データとしてモデルが構築されていること
- 抗体構造データが乏しいこと
深層学習モデルの開発と発展が著しいですが、どのような対象でもRoseTTAFoldの方が優位、という状況では現時点でないようです。
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