【バインダーデザイン】IL-2 mimic な分子をデノボデザイン!

論文タイトル

De novo design of potent and selective mimics of IL-2 and IL-15

出典

Nature. 2019 Jan;565(7738):186-191.

De novo design of potent and selective mimics of IL-2 and IL-15 - PubMed
We describe a de novo computational approach for designing proteins that recapitulate the binding sites of natural cytokines, but are otherwise unrelated in top...

確認したいこと

タンパク質ベースのバインダーデザインについて、深層学習以前の手法開発の歴史をさかのぼって調査しています。

要旨

IL-2 mimicな分子をデノボスキャフォールドでデザインした報告です。

解説など

サイトカインやその改変体タンパク質を治療薬として開発するうえでの課題として、筆者らは下記の3点を挙げています。

  • 低い安定性
  • 導入変異に起因する免疫原性
  • サイトカインとその受容体の結合プロファイルを変化させること

3点目について補足すると、対象とするサイトカインが、複数の受容体に対して結合する場合、その交差性パターンを変化させることに大きなハードルがあります。

筆者らはこれらの課題を解決するために、デノボスキャフォールドをベースにサイトカインミミックをデザインする手法を紹介しています。標的分子はIL-2です。IL2は、IL2Rβ/IL2Rγと相互作用することで、シグナルを誘起しますが、その治療薬としての使用は、IL2がCD25 (IL2Rα)と相互作用することによる毒性によって制限されていました。

具体的なデザインフローは下記のとおりです。

第一世代

  1. IL2のすべてのヘリックス(H1/H2/H3/H4)をデザインの出発構造として定義
  2. 各ヘリックスをフラグメントアセンブリにより再構築
  3. フラグメント由来のループで各ヘリックス間を連結
  4. Rosetta combinatorial flexible backbone sequence designで配列設計
  5. 酵母ディスプレイスクリーニング
  6. 部位飽和変異導入

第二世代

  1. 第一世代の高親和性配列を鋳型に設定
  2. ループ構築プロセスとヘリックス長のパラメトリックな変更法を用いて計算設計プロセスを実行
  3. 親和性と安定性を指標にインシリコで候補配列を選抜
  4. 発現精製と実験検証
  5. 部位飽和変異導入

第一世代で同定した高親和性のバインダーは低い熱安定性を示したため、第二世代では安定性の改善を志向して分子を最適化しています。得られたバインダーは、天然のヒトIL-2に比べ高い親和性を示すとともに、IL-2Rαとは相互作用しないことが示されています。また95℃、60分間のインキュベーションでも十分な活性を示し、モデルマウスへの複数回投与でも免疫原性はほとんどみられません。デノボデザインの有用性を十分に実測で証明した論文となっています。

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