論文タイトル
In vitro validated antibody design against multiple therapeutic antigens using generative inverse folding
出典

要旨
筆者らは、IgDesign という手法で、抗原結合抗体をインシリコでデザインし、ウェットでその結合活性を確認した事例を紹介しています。
解説など
抗原結合抗体のインシリコデザインについての論文で、Absci Corporation からのレポートです。Absciは、AI に強みをもつ米国のバイオスタートアップです。

筆者らが開発した「IgDesign」では、抗体-抗原複合体構造を利用して、重鎖のCDR (HCDR1, HCDR2, HCDR3) を再設計することができます。
本手法は、「LM-Design」で提案された構造エンコーダと配列デコーダを組み合わせるアプローチがベースになっています。LM-Design は、既存の PLM から構造情報を追加で訓練させたタンパク質生成モデルです。LM-Design に関しては、以下の記事で過去に紹介しましたので、詳細はこちらをご参照ください。
IgDesign では、最初に 「IgMPNN」 と呼ばれる配列生成モデルを介してフォワードパスを実行します。ここから得られた配列が、タンパク質言語モデル (ESM2-3B) への入力として提供されます。
IgMPNN は、40% の配列同一性を指標に抽出したタンパク質データで事前トレーニングされ、つづいて SAbDab からの抗体-抗原複合体で微調整されています。IgDesign は IgMPNN を構造エンコーダーとして使用して、前記抗体-抗原複合体で微調整されます。
彼らは IgDesign の評価として、抗体抗原複合体構造が SAbDab に登録された 8 つの治療用抗原を選択し、各抗原について、100 万個の抗体配列を生成しました。
結果として、IgMPNN および IgDesign は、すべてのケースで ProteinMPNN よりも recovery rate について優れたパフォーマンスを示しています。また、IgDesign からデザインされた HCDR3 は、8 抗原中 7 抗原について、鋳型の HCDR3 よりも統計的に有意に強く結合しているとのことです。
抗原情報やコードは開示されていませんが、vitro で活性を示す抗体をデザインできた実施例として、貴重な文献です。