論文タイトル
Tuning Insulin Receptor Signaling Using De Novo Designed Agonists
出典

要旨
計算機でインスリンアゴニストを設計した事例を紹介した論文です。
解説など
Baker 研からのタンパク質デザインの実施例報告です。本研究ではインスリンミミックをデノボでデザインしています。
天然のインスリンはその受容体に対して L1’/F1 ドメイン(Site-1)と F1ドメイン(Site-2)という2つの異なるエピトープが存在します。その両方にインスリンが結合することで受容体が活性型として安定化し、インスリンシグナルを誘導することができます。
筆者らは、この2つのエピトープに対して、それぞれデノボでのバインダー設計を試みています。またさらにその2つのバインダーをリンカーで融合した融合タンパク質をデザインしました。
具体的なデザイン手法ですが、Site-1 に対するバインダーは既報にありますので、この論文では Site-2 のバインダーデザインから記述されています。構造と配列の設計は RIFDock → Rosetta Fast Design を用いて行われ、以下の指標を用いてインシリコでスクリーニングされました。
- Rosetta metrics
- ddg
- sasa
- contact_molecular_surface
- contact patch
- DeepAccNet
- Plddt
計 11,452 配列を酵母ディスプレイで評価し、17 種のバインダーを取得。さらに site saturation mutagenesis や combination mutagenesis を経て KD 1.9 nMのバインダーを取得しました。
一方融合タンパク質(ドメイン間リンカー)のデザインには、RFDiffusion を利用しています。まず native IR の active conformation を参考に Site-1/Site-2 配置を固定し、デノボバインダー間のリンカーを RFDiffusion で生成します。コツとして、バインダーのリンカー近傍のN/C末は再設計領域に含めてデザインしているようです。インシリコのスクリーニングは以下の指標をベースに行っています。
- AF2
- pae interaction
- plddt
- Rosetta metrics
- ddg
- contact surface
設計されたタンパク質は、Site-1/Site-2 の両方に結合し、きちんとアゴニスト活性を発揮することが示されています。RFDiffusion 生成のリンカーの代わりに GS リンカーを挿入したコンストラクトではアゴニスト活性が部分的であったとのことで、ドメイン間配向を RFDiffusion で厳密に制御することの有用性が示された結果となっています。