生成AI「Origin-1」による de novo 抗体設計の実証研究

論文タイトル

Origin-1: a generative AI platform for de novo antibody design against novel epitopes

出典

https://www.absci.com/wp-content/uploads/2026/01/260114_Origin1_Final_Submission.pdf

要旨

既存の抗体結合構造情報が存在しない「ゼロプライア(zero-prior)エピトープ」に対して、生成AIを用いて抗体をde novo設計するプラットフォーム「Origin-1」が提案されています。

解説など

この研究の目的は、抗体や他タンパク質との複合体構造が一切知られていない標的部位(ゼロプライア・エピトープ)に対して、抗体を最初から設計できるかを検証することです。

筆者らの属する Absci ではこれまでにも抗体のデノボ設計の実施例を公開していますが、本論文では彼らの設計パイプラインを Origin-1 という統合プラットフォームとして名付けて紹介しています。Origin-1 は従来の構造生成・配列生成・スコアリングの3要素からなるパイプラインで、各要素に Absci 最新の改良が施されています。

1. AbsciDiff:エピトープ条件付き・全原子構造生成

  • 拡散モデル(diffusion model)を用いて抗体–抗原複合体の全原子構造を直接生成します。
  • 抗体フレームワーク(骨格)は、実績のある治療抗体由来のものを使用します。

2. IgDesign2:構造条件付きCDR配列設計

  • 上で得られた複合体構造を入力として、CDR配列を自己回帰的に設計します。
  • グラフニューラルネットワーク(GNN)で立体構造を表現し、自己回帰トランスフォーマーと IgBert を組み合わせて配列を洗練します。
  • 重鎖・軽鎖をペアとして同時に扱う点が特徴です。

3. AbsciBind:結合評価に特化したスコアリング

  • AlphaFold-Multimer系のco-folding手法をベース
  • 計算効率改善のため、5つ事前学習済みモデルのうちのひとつ(Model 2)のみ構造予測
  • 推論の安定性を高めるためのマスキングをあえておこなわず、抗体・抗原相互作用を正確に予測できる “unmask” 設定を利用
  • Hch-Ag, Lch-Ag, Hch-Lch の界面のうち、抗原との相互作用界面の精度を優先した独自の ipTM 指標でスコアリング

著者らは、PDBに抗体複合体構造が存在しない10種類のヒトタンパク質を選び、そのうち以下の4標的で詳細な実験検証を行っています。

  • COL6A3
  • AZGP1
  • CHI3L2
  • IL36RA

各標的につき100設計未満という比較的少数の抗体を実際に発現・精製し、SPR、BLI、複合体形成試験、開発適性評価などを段階的に実施しています。結果として、特異的結合を示す抗体が同定されています。