論文タイトル
CIRPIN: Learning Circular Permutation-Invariant Representations to Uncover Putative Protein Homologs
出典
要旨
環状置換(Circular Permutation, CP)によってN末端とC末端の位置が変わっても、全体の立体構造の類似性を見つけられる新しいグラフニューラルネットワーク「CIRPIN」を開発しています。
解説など
背景
この研究の中心課題は、「タンパク質の折りたたみ(フォールド)は似ているのに、配列上の開始点と終了点(N/C末端)の位置が違うために、既存の構造検索で見つけにくい関係」をどう見つけるかです。
環状置換(CP)は、タンパク質鎖を一度つないで別の場所で切り直したような関係です。そのため、3D構造はかなり似ていても、配列順序に依存する検索法では別物として扱われやすいという問題があります。
本文では、既存の高速構造検索モデル Progres をベースに、CPに不変(invariant)な埋め込み表現を学習する CIRPIN を提案しています。
方法
基本アイデア
タンパク質構造を、Cα原子をノードとするグラフとして表現します。
10Å以内の近接残基をエッジとして接続し、E(n)-equivariant GNN(座標変換に頑健なグラフニューラルネットワーク)で埋め込みます。
synCP(synthetic Circular Permutation)
本研究の重要な工夫は、学習中に人工的な環状置換データ拡張(synCP)を行うことです。
- 元の構造座標列を circular shift(順序の回転)
- N/C末端位置だけ変化
- 構造コアはほぼ同じ
これにより、同一タンパク質の複数の“環状置換版”を学習させ、モデルに「順序が変わっても本質的構造は同じ」と理解させます。必ずしもsynCPはオリジナルのN/C末端が近い必要はありません。実現可能性の高いCPを生成するのではなく、配列順序情報を失ったデータを生成することで、「末端位置」への過剰依存を減らすことが主な目的です。
学習データ
- 同じSCOPe family:positive pair
- SCOPe:タンパク質の立体構造を進化的・構造的な類似性にもとづいて分類したデータベース
- 異なるfamily:negative pair
- supervised contrastive loss(同類を近づけ、異類を遠ざける損失)
結果
ベンチマーク性能
SCOPe homolog retrievalでは、
- CIRPIN: Fold 0.166 / Superfamily 0.692 / Family 0.865
- Progres: Fold 0.177 / Superfamily 0.706 / Family 0.877
本文では、通常ホモログ検索性能はほぼ維持しつつ、CP検出能力を追加したことが示されています。
既知CP検出
著者らが文献から作成した11ペアのCPテストセットでは、
- TM-align:3/11
- TM-align -cp:7/11
- Progres:4/11
- CIRPIN:9/11
さらにSCOPe family重複を除いた調整後では、
- Progres:2/9
- CIRPIN:7/9
となっており、本文ではCIRPINの方がCP検出に強いとされています。
本モデルは、隠れた遠縁ホモログの探索に利用できるほか、構造コア保持度が高い切断位置候補を探索することでCPの設計にも応用できそうです。

