論文タイトル
Accelerating multi-objective VHH discovery via integrated high-throughput selection and AlphaFold3-guided structure prediction
出典

要旨
本研究では、複数の類縁毒素に同時に結合できるVHH抗体を効率よく見つけるために、酵母ディスプレイによる高スループット選抜とAlphaFold3による複合体構造予測を統合したパイプラインが提案されています。
解説など
この研究の目的は、「複数の関連する標的に結合でき、かつ医薬品として使いやすい抗体を、より速く見つけること」です。筆者らはディスプレイスクリーニング x NGS で同定した VHH 配列を AlphaFold3 で抗原複合体構造予測して、その ipTM でバインダーを選抜することを試みています。
本実施例での標的抗原は、コブラやマンバなどのヘビ毒に含まれる長鎖α-ニューロトキシンです。
実験の流れ
- ファージディスプレイ+酵母ディスプレイ
まずファージディスプレイでVHHライブラリを粗く濃縮し、その後、蛍光標識した複数毒素を用いた多重化酵母ディスプレイ選抜を行っています。これにより、- 単一毒素のみに結合するVHH
- 複数毒素に同時に結合するVHH
を同時に分離・回収しています。
- ディープシーケンスとCDRクラスタリング
選抜後の集団をすべて次世代シーケンスし、CDR1–3配列の類似性に基づいてクラスタリングしています。 - AlphaFold3によるVHH–毒素複合体構造予測
選ばれたVHH配列について、AlphaFold3を用いて毒素との複合体構造を予測しています。ここでは ipTMスコア(interface predicted TM score) を指標にし、本文では ipTM > 0.8 を高信頼な結合予測の基準として用いています。
上記の実験の結果、ipTM > 0.8 で選ばれた予測は、実験的結合データと高い一致を示し、特にポリスペシフィックな性質を示す VHH では高い精度が得られました。詳細に解析すると precision は高いものの、accuracy はそれに比べて低いとのことで、false negative が一定割合存在します。またポリスペシフィックな性質を示す VHH を適切に同定できる点については、予測精度にエピトープ指向性があることを意味しているとも捉えられ、網羅性の高いスクリーニングとは必ずしも言えません。多抗原への特異性が非特異結合でないことを十分に実験で示されていないことも気になります。
従来の実験的な Hit discovery のプロセスに AF3 予測によるフィルタリングを採用している少ない事例で、その課題など参考になる論文です。


