論文タイトル
Repertoire-scale antibody structural prediction informs therapeutic design
出典
要旨
AlphaFold3を抗体工学向けに大幅高速化した「AF3-TurboAb」を開発し、抗体配列レパトア全体を対象に抗原との複合体構造を大規模予測できるようにした研究です。
解説など
抗体医薬やワクチン設計では、「どの抗体が抗原のどこにどう結合するか(エピトープと結合様式)」が重要です。ただし従来は、AlphaFold3は高性能でも、大量抗体スクリーニングには計算コストが高い、という課題がありました。
そこで著者らは、AlphaFold3の前処理(MSA: 多重配列アラインメント、テンプレート探索)を抗体専用に最適化し、抗体レパトア全体を扱えるAF3-TurboAbを構築しました。本手法では特にナノボディ(VHH)を主対象にしている点が特徴です。
具体的な方法として、著者らは、
- 抗体/Nb専用MSAライブラリ
- 抗体向け構造テンプレート集
- 抗原側MSAの事前計算と再利用
を導入しました。
これにより、MSA検索時間が約670秒から1.6秒へ短縮されたと記載があります。さらに、エンドツーエンド予測は約35秒/seedまで短縮されました。
抗体/Nb専用MSAライブラリ
代表的なナノボディ配列200個を使って標準AF3でMSA検索を行い、そこで得られた関連配列を集め、重複を除いて「Nb向けの小型MSAデータベース」を作っています。これによりもともと10^9ほどあったデータベースの配列数を1.7×10^5まで削減しています。
抗体向け構造テンプレート集
構造テンプレートは、「似たタンパク質構造の既知例」です。AF3は配列だけでなく、PDBにある既知構造も参考情報として使えます。者らは、MSAと同様に、ナノボディや抗体に関係する構造テンプレートだけを抽出して、良質な小型のテンプレートライブラリを作りました。これにより1.9×10^4のPDBテンプレートから<10個まで削減しています。
抗原側MSAの事前計算と再利用
標準的に毎回AF3を走らせると、同じ抗原についてMSAやテンプレート探索を10万回くり返すことになります。そこでAF3-TurboAbでは、抗原側のMSAと構造テンプレートを最初に1回だけ計算し、その後すべてのナノボディ予測で使い回します。
精度検証
2022年以降のPDB由来ナノボディ-抗原複合体243件(AF3学習後データ)で検証し、標準AF3とのipTM相関はPearson r=0.95でした。また、ipTM ≥ 0.8の高信頼モデルでは、実験構造とのエピトープ一致率中央値が約90%と報告されています。
本手法は、デノボデザインのスクリーニングだけではなく、免疫スクリーニングにも活用できることを示す貴重な実施例です。

