論文タイトル
Current approaches to flexible loop modeling
出典
Curr Res Struct Biol. 2021 Aug 5;3:187-191.

要旨
タンパク質のループ構造に特化して、モデリングするための手法をレビューしています。
解説など
タンパク質に存在するループ構造のモデリングに関するレビューです。ボリュームは少なめで簡潔に論が展開されています。
ループ構造は、タンパク質配列のおよそ1/3、酵素活性部位の1/2に相当する領域に存在しています。ループはその構造の不安定性から、構造情報の取得が難しいとされます。実際に、PDBに登録されている構造の69%が、欠損領域を含み、そのうち90%がループや構造化されない末端領域であることが知られています。
ループのモデリング手法は、以下の3ステップで実行されます。
- 立体構造のサンプリングまたは検索
- スコアリングおよびクラスタリング
- 後処理や精密化
サンプリング手法については、以下を例に新しいプロトコルが年々提案されている状況です。
これらの解析アプローチは、以下のクラスに分類することができます。
- knowledge-based
- ab initio
- hybrid
このあたりは過去の記事のとおりです。
その特徴から、「knowledge based」は、構造的に保存された領域を解析することが得意であり(抗体のH1/H2/L1/L2/L3など)、[ab initio」アプローチでは、構造情報を少ない領域を解析することが相対的に得意です(抗体のH3など)。
「ab initio」や「hybrid」法においては、ループ閉鎖法という手法がよく用いられます。これは、ループのN末端とC末端を結合して固定点として解析する手法です。この手法にも、数値最適化手法と解析解をそれぞれ用いる2種類の手法が存在します。
モデリングステップの2段階目にあたるのがスコアリング手法です。これにも、「knowledge-based」、「physics-based」、「hybrid」の3タイプの手法が提案されています。
このサンプリングとスコアリングの2つのステップが、モデリングにおける主要な負担であり、この分野の進展のカギを握ると考えられます。
図4が、これまでに開発されたループモデリング手法の一覧です。最新の手法では、12残基程度の短いループに関しては、安定構造を予測することができます。
本文では深層学習を用いた解析手法も紹介されています。ループ構造の実験データが充実しづらい、というジレンマがありますが、今後に期待したいところです。
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