【タンパク質デザイン】David Bakerの Nature 最新論文を解説

論文タイトル

Design of protein binding proteins from target structure alone

出典

Nature. 2022 Mar 24. doi: 10.1038/s41586-022-04654-9.

Design of protein-binding proteins from the target structure alone - PubMed
The design of proteins that bind to a specific site on the surface of a target protein using no information other than the three-dimensional structure of the ta...

確認したいこと

タンパク質の人工デザイン手法

要旨

12種の多様なタンパク質に対して結合する、65残基以下の人工タンパク質をde noveデザインした

用語

  • RIF: rotamer interaction field

解説など

Rosettaアルゴリズムを開発したDavid Bakerの論文です。

標的タンパク質に結合する、タンパク質性分子をデザインすることには、いまだに課題があります。実施例は多数報告されており、中には高親和性分子の作製に成功した事例もありますが、構造レベルで予測との一致した報告がされることは稀です。

また天然に存在するスキャフォールドをエンジニアリングしようにも、標的タンパク質に結合できるポケットやクレフトが存在しない、いわゆる設計可能性の問題に直面するケースもあります。

本研究では、完全に人工的なタンパク質から、標的タンパク質に結合する分子のデザインを目指しています。

本手法では、幅広いスキャフォールドライブラリから、適切なタンパク質骨格を探索するグローバルサーチと、選択した骨格に対して適したモチーフを最適化するフォーカスドサーチからなる、段階的な配列探索によってタンパク質をデザインしています。

一般的に、タンパク質間相互作用は、非常に弱い相互作用が組み合わさることで成立しています。従って、この一つ一つの弱い相互作用をもれなく探索することが重要です。

本研究ではまず、独立したアミノ酸と標的タンパク質とのエネルギー的に有利な水素結合や非極性相互作用を、数十億の可能性から探索します。相互作用エネルギー値の近似には、”rotamer interaction field” (RIF) が用いられています。詳細は追えていませんが、以下の論文によるとRIFは、アミノ酸配列と剛体の自由度を同時に最適化するドッキングアルゴリズム、とのことです。

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探索するライブラリーは、大きな疎水コアを含む50-65アミノ酸からなるスキャフォールドです。適切なアミノ酸の組み合わせはRosettaベースのプレスクリーニングに供されて選抜されます。従来のRosettaのスクリーニング手法では、極性基がタンパク質内部に埋もれて、最適でない分子が選択される課題がありましたが、この点も改良されているとのことです。

その他、抗原結合時の溶媒接触可能領域が変化することに起因する、2次構造のパッキングの不確かさも、正確に定量する手法を開発することで改善されています。

分子最適化におけるフォーカスドサーチの過程において、筆者らは2次構造モチーフを抽出するリサンプリングプロトコルを開発しています。探索したモチーフをクラスター化し、各クラスターで最適なモチーフをRosetta結合エネルギーをベースに選択するとのことです。

また、ねじれ角の最適化により骨格の柔軟性を調整して、標的タンパク質との相補性を増大させています。

本研究の素晴らしい点は、12種の標的タンパク質に対して、それぞれに15,000-100,000配列をデザインして、実際に結合性を評価している点にあります。これによりチャンピオンデータとしてではなく、本手法の再現性を正確に示すことができています。

具体的には、デザインした配列を酵母にディスプレイして、フローサイトメーターで抗原結合分子をソーティングし、NGSで単離した配列を同定しています。

デザインした配列が抗原に結合する割合は、抗原の種類に依存します。多くて数万配列を評価した中で数100、少ないと100,000配列中に10未満の数であるようです。提案配列の特徴としては、疎水性残基に起因する結合が多かったとのことです。いまだに極性残基により結合界面をつくるのは、難度が高いという結果でした。

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