【de novo デザイン】Rosettaが誇る抗体デザインツールRAbDを解説

論文タイトル

RosettaAntibodyDesign (RAbD): A general framework for computational antibody design

出典

PLoS Comput Biol. 2018 Apr 27;14(4):e1006112.

RosettaAntibodyDesign (RAbD): A general framework for computational antibody design - PubMed
A structural-bioinformatics-based computational methodology and framework have been developed for the design of antibodies to targets of interest. RosettaAntibo...

確認したいこと

  • RAbDの解析原理、特徴、実績

要旨

抗体のデザインツールである、RAbDの手法を紹介した原著論文です。

解説など

抗体のin silicoデザイン手法、RosettaAntibodyDesign(RAbD)の原著論文です。

本手法は、OptMAVEn、AbDesignに続く主要な抗体デザイン技術で、前者2つの技術との原理的な比較についても言及されているのが特徴です。

筆者らは、PDBに登録された全CDR構造の、新規な分類法を提案しています。この分類手法をもとにPyIgClassifyデータベースが開発されています。このデータベースではPDB中の全ての抗体について、CDRの配列にクラスタリングラベルがアノテーションされています。RAbDでは、このクラスターを核として、ナレッジベースの抗体デザインツールに仕上げています。

また、本手法はその名のとおり、抗体のデザインにRosettaのスコアリング関数を使用しています。

解析のワークフローは、原著論文の図1で図示されています。大きく、抗体の骨格を評価する”outer cycle”と、その大きな評価サイクルの内部に位置して、配列のデザイン・最適化を行う”inner cycle”の2つの周期を交互に繰り返して、抗体をデザインします。

細かい点ですが、一般的にタンパク質デザインの妥当性は、”sequence recovery” (デザインしたアミノ酸配列において、天然配列と一致する残基の割合)で評価されることが多いです。この場合、”sequence recovery”は高い方が望ましいことになります。本論文ではより精度高く妥当性を評価するために、設計リスク比と抗原リスク比と呼ぶ、2つのリスク比(下記リンクを参照)で評価しています。

相対危険 | 疫学用語の基礎知識

本論文では、抗gp120抗体(CH103)と、抗ヒアルロニダーゼ抗体(2J88)の2つについて、それぞれ特定のCDRループを再デザインすることで、親抗体の親和性が増強できるか検証しています。CH103はH2, L1, L3を、2J88は、H2, L1, 軽鎖DEループ(82~89残基目)をデザインしています。

2J88由来のクローンは、30デザイン中、20種が結合性を示し、うち3つは、9.2nMで結合する野生型よりも親和性が向上していました。一方、CH103由来のクローンは、27デザイン中7つが、gp120への結合を確認できています。本論文では、これらのクローンにさらに変異を加えた評価もおこなわれていました。

本ツールの特徴は、アフィニティーマチュレーションから、de novoデザインまで、様々な抗体デザイン用途に柔軟に対応できる点にあります。ユーザー選択の例として、以下のものが挙げられます。

  • 最初の複合体構造を探索した後に、デザインするCDRを選抜
  • 最適化時に評価するエネルギー指標を選択(opt-dG or opt-E)
  • ドッキング改良ステップの有無
  • ループステップ数

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