論文タイトル
De novo protein design enables the precise induction of RSV-neutralizing antibodies
出典
Science. 2020 May 15;368(6492):eaay5051.

確認したいこと
- 抗体誘導免疫原のde novoデザイン手法
要旨
標的エピトープに結合する抗体価の上昇を目的に、適切なワクチンをde novoデザインする手法を開発した
- 免疫原のde novoデザインツール”TopoBulder”を開発した
- RSVの中和エピトープをデザインし、RSV感染モデルマウスに接種することで、RSVに対する中和抗体価が優位に上昇した
用語
- RSV: respiratory syncytial virus
- RSVF: respiratory syncytial virus fusion protein
- NHPs: nonhuman primates
解説など
感染症に対するワクチンのデザインにおいては、中和エピトープの同定が重要です。対象のエピトープがリニアエピトープとして機能する場合は、標的エピトープのペプチドフラグメントをデザインすることで、対象のエピトープに特異的に結合する抗体を誘導することが可能です。しかし、標的が非連続エピトープの場合は、それができません。
本論文では、非連続エピトープを、その構造を保つためのスキャフォールドとともにin silicoでデザインする設計手法を紹介しています。その設計プロトコルをTopoBuilderと命名しています。
TopoBuilderは、テンプレートフリーの設計手法です。その解析手順は以下の3つのステップで構成されています。
- 2次元空間におけるトポロジカルサンプリング(αβαフォーム トポロジー定義スキーム)
- 3D投影と、パラメトリックサンプリング
- 柔軟なバックボーンのサンプリングと、配列のデザイン(Rosetta FunFolDes)
ちなみに、本手法の開発初期には、Rosetta FunFolDes単独でのデザインを試みましたが、天然の構造と一致するデザインを見出すことは、難しかったと言及されています。
本論文では、TopoBuilderによるデザインをRSVに対するワクチンデザイン設計に応用しています。
実際にデザインした配列から、中和抗体に対してKD=1 nMを示す分子の同定に成功しています。またRSV感染マウスにデザインしたワクチンを投与することで、中和抗体価が上昇したことも示されています。
prefusion RSVF(コンベンショナルなワクチンデザイン)と比較すると、抗体価の上昇は同等ですが、標的エピトープへの結合活性が改善していました。また、prefusion RSVFからのブースト免疫時にデザインワクチンを使用することでも、高い効果を発揮するとのことです。
人工デザインされたスキャフォールドに対する免疫誘導の影響が気になるところですが、感染性ウイルスの中和抗体は非連続エピトープであることが多いので、技術のニーズは高いと感じました。
本手法のコードはgitに公開されています。GUIなどはなさそうで、解析パイプラインの利用にはライセンスの必要なRosettaの使用が求められます。
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