【抗体モデリング】抗体に特化した側鎖構造予測手法PEARSについて

論文タイトル

Antibody side chain conformations are position-dependent

出典

Proteins. 2018 Apr;86(4):383-392.

Antibody side chain conformations are position-dependent - PubMed
Side chain prediction is an integral component of computational antibody design and structure prediction. Current antibody modelling tools use backbone-dependen...

確認したいこと

  • 抗体のCDR側鎖の構造(表面露出性)の予測

要旨

抗体の側鎖構造を予測するツールであるPEARSを紹介しています。

解説など

本論文では抗体の側鎖構造を予測するツールであるPEARSが紹介されています。

タンパク質主鎖が形成する2面角は、Ψ、θで表されますが、側鎖が形成する角度はχで表されます。Cαの距離が近い方から順にχ1, χ2…と表現されます。原子間の立体的な制約のために、各アミノ酸ごとにχの値には選好性があります。例えばセリンのχ1角の分布は、60, 180, 300°でピークを示します。

この側鎖角を予測する手法においては、以下3点が重要な役割を果たします。

  • エネルギー関数
  • 探索法
  • 回転異性体ライブラリ

回転異性体ライブラリとは、側鎖のχ角分布の統計モデルです。大きく以下の3種類に分類されます。

  • 主鎖と独立したライブラリ
  • 主鎖に依存したライブラリ
  • その他(2次構造などに依存)

主鎖に依存した回転異性体ライブラリは最も一般的で、例えばSCWRL、RASP、SIDEproなどのライブラリが存在します。これらはいずれもタンパク質汎用的に予測するためのツールになります。

本論文では抗体に特化した側鎖予測手法 (position-dependent antibody rotamer swapper, PEARS)を開発しています。PEARSは、SAbDabからロードされた639のモノクローナル構造を用いて構築されています。これは他の回転異性体ライブラリよりも小さいデータセットになります。

PEARSから側鎖を予測すると、対象の各アミノ酸に対してχ角の分布を取得することができます。フレームワーク領域はやはり、分布が単峰性となりやすいとのことです。抗体の各アミノ酸残基に対して統計的にデータを取得すると、55.1%は単峰性のχ1角度を示し、22.1%は二峰性、15.3%は三峰性でありました。

本論文では、PEARSの精度検証のため、他の側鎖予測手法SCRWL、RASP、SIDEproと比較しています。

結果として、やはり単峰性を示した残基では、PEARSが最も高い予測精度を示していました。一方でNo mode(単/二/三峰性以外)を示す残基は、他の予測手法より低い精度でありました。H3などのホモロジーモデリングが難しい部位においては、データ量や物理化学的な計算手法が必要である事実を反映しているということでしょうか。またPEARSでは、他の予測手法と比較して、側鎖どうしのクラッシュが起こりにくい構造を予測していたという結果も紹介されていました。

本手法はウェブサーバで解析を実行することが可能です。一度ご自身で確認してみてはいかがでしょうか。

SAbPred: PEARS

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