以下の記事の続きです。併せてご覧ください。
解説など
この記事では前回に引き続き、in silicoでのタンパク質構造予測・デザインに関するレビュー論文を解説していきたいと思います。
今回は、タンパク質のデザインについてです。
タンパク質のデザインは、
- 構造フレームワークの構築
- アミノ酸配列の同定・最適化
の2ステップからなります。
構造フレームワーク
初期の構造フレームワークの構築には、構造予測でも利用されたフラグメントの組み立て(fragment assembly)が利用されました。
この他、
- RosettaRemodel:2次構造や残基間距離から、タンパク質をデザインする手法
- 理想的なパラメトリックモデル
などの手法が存在します。
配列最適化
フレームワークが構築された後は、反復的な配列最適化のステップに移ります。
最適化ステップにおいては、物理化学的または知識ベースによるエネルギー関数を用いて配列が評価されます。
- Rosetta
- EvoEF2
- EvoDesign
は、代表的な最適化プロトコルです。
いずれも、定められたタンパク質骨格に対して、ランダムに選択されたポジションのアミノ酸側鎖を、ライブラリから選択された回転異性体に置換します。そして、変異によって生じたエネルギー変化をエネルギー関数を用いて評価し、メトロポリス法で選抜する流れです。
複雑な構造や機能をもつタンパク質への適用
デザイン研究はその対象が徐々に、複雑な構造や機能を持ったタンパク質へと移っていきます。
複数のエネルギー状態をとるタンパク質はその一例で、具体的には、特定の環境下で構造が動くタンパク質のデザインが試みられています。このような分子は、合成生物学における論理ゲートとしても有用です。
2つ目の例は小分子に結合できるタンパク質をデザインする手法です。van der merは、相互作用する化学基にアミノ酸主鎖を直接マップすることができます。
3つ目の例は、治療用タンパク質のデザインです。具体的には治療標的となるタンパク質に結合する分子をデザインする手法になります。実際にサイトカインやウイルスに結合するタンパク質をデザインした研究例が存在します。また、免疫原のデザインも可能で、この技術はワクチンデザインにも応用することができます。
これまでのタンパク質デザインのひとつの課題は、デザインするタンパク質の制約を手動で指定する必要がありました。したがってデザインの成功・失敗が、デザイン者のセンスに委ねられてしまうことがあります。この問題を解決し、デザインの成功確率を高めるため、ユーザー定義が不要なFoldDesignとよばれる新しい手法も開発されています。
深層学習
深層学習を活用した、タンパク質デザイン例を以下に挙げます。体系的に整理できるほどの実施例はないのか、具体例を挙げる形で言及されていました。
- SPIN(SPIN2):天然配列の特徴を指標に配列を生成する。主鎖ねじれ角、フラグメント配列の特性、回転異性体に基づくエネルギー特性から、望ましい構造を選抜。
- Anand’s approach:局所的にボクセル化した環境を特徴をモデルで抽出。
- Greener’s approach:VAEを利用して金属結合部位を付与。
- Hallucination:以下の記事を参照
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