論文タイトル
De novo protein design: how do we expand into the universe of possible protein structures?
出典
Curr Opin Struct Biol. 2015 Aug;33:16-26.

確認したいこと
深層学習を利用した、タンパク質構造予測・デザイン手法をベンチマークしています。
先日の記事で、タンパク質構造をパラメトリックに表現する手法について言及があったので、詳細を確認するために、この論文を読んでみました。
要旨
天然のタンパク質は、考えられるすべてのアミノ酸配列の可能性の中で、極めて狭い空間にしか存在していません。”protein universe”と呼ばれるタンパク質構造の空間の中で、未開拓な構造や機能を探索する方法についてレビューした論文です。
用語
- SSE: secondary structure element
章立て
- 緒言 – 自然にはないタンパク質構造を研究する意義とは
- 天然タンパク質構造の種類数の推定
- 実現し得るタンパク質構造空間について
- 未開拓のタンパク質構造空間
- 計算機設計から実験的な手法への移行:タンパク質構造のパラメータ化
- 現時点で達成されているパラメトリックなタンパク質デザイン
- βプロペラ、コイル、およびその他の、パラメータ化可能なタンパク質構造
- この新興的な手法を通じて、天然のタンパク質から何を学べるか
- デザインしたデノボタンパク質は、何に活用できるだろうか
解説など
本論文では、以下の問いに対して、ヒントとなる既往の研究をレビューしています。
- 天然に存在しないタンパク質以外に、どのようなタンパク質構造があり得るだろうか
- de novoタンパク質を、どのように現実のものとできるのだろうか
de novoタンパク質は、これまで、以下のような方法で生み出されてきました。
- 複数のSSE(αヘリックスとβストランド)の列挙・組み合わせ
- 無作為なライブラリーから機能性配列を選択
- パラメトリックアプローチ
このレビューでは、それぞれの手法を解説しながら、上記の問いに対する示唆を与えています。
SSEの基本構造
CATHやSCOPには、あらゆるタンパク質の構造分類が定義されて公開されていますが、近年、データの蓄積数の爆発的な増加とは相反して、まったく新規なフォールディングの報告事例は少なくなっています。天然のタンパク質は、限られたフォールディングセットの中で機能を多様化させている、ということです。そのためデノボデザインにおいても、既存のモジュールの組み合わせによって、多様性を増加させるアプローチが、有効な手段の一つとして考えられます。
単純なαヘリックス・βストランドの組み合わせだけでも、個数比率・配向・順序の違いによって膨大な場合の数を列挙することが可能です。テイラーは、2次構造を”basic Forms”として、タンパク質構造の周期表にまとめています。
パラメトリックなアプローチ
コイルドコイルとβプロペラ構造は、その構造をパラメータで正確に表現することが可能です。
コイルドコイルをモデリングするためのツールに、
- CCCP
- CCBuilder
があります。
一方で、デザインや汎用的な記述が難しい構造は、ループ・ターン構造です。これらの構造に対する予測・デザイン手法は、今後の主要な研究課題になると思います。
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