Rosettaを用いたデノボタンパク質デザイン手法をレビュー

論文タイトル

Essentials of de novo protein design: Methods and applications

出典

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確認したいこと

Rosettaの使い方を学習できるコンテンツを作成したいと思い、Rosettaの仕組みについて勉強中。

要旨

タンパク質のデノボデザインに有用な計算手法について概説されたレビュー論文です。

章立て

  1. 緒言
  2. 計算機タンパク質デノボデザインの進歩
    1. タンパク質構造のデノボデザイン
    2. タンパク質機能のデノボデザイン
  3. タンパク質構造のデノボデザイン手法
    1. デノボタンパク質主鎖構造生成
      1. フラグメントアセンブリ
      2. パラメトリックデザイン
      3. Kinematic closure (KIC)
      4. SEWING
      5. ネガティブデザイン
      6. ループ構築
    2. 配列デザイン
      1. Packerの制御
      2. デザインされた配列の選抜
    3. 配列と構造の適合性
      1. 局所的な配列・構造間の適合性
      2. 非局所的な配列・構造間の適合性
    4. 実験によるキャラクタライゼーションとデザイン成功率
  4. 結言と展望

解説など

デノボデザイン手法を、Rosettaやそれに実装されたツールを中心に、デザイン工程別に分類して概説した論文。数理的な解説はないため、各技術を理解するには不十分かも。各デザイン工程に必要な技術や考え方を学びつつ、詳説を探すためのアーカイブとしてとして利用するのがよさそうに思います。

第3章で具体的なデザイン手法について述べられています。3章の冒頭でデザイン工程として以下の4ステップを挙げています。

  1. 標的構造の定義
  2. 主鎖骨格の設計
  3. 配列の設計
  4. 配列と標的構造間の適合性の評価

その後の3章内の各節では、それぞれのステップに用いられる技術を紹介しています。

主鎖構造のデザインには、

  • フラグメントアセンブリ
  • パラメトリックデザイン
  • KIC
  • SEWING

の4種類の手法が紹介されています。フラグメントアセンブリは最も主流な方法論で、骨格構造を断片単位でフラグメントライブラリから探索して組み立てる手法です。2次構造間のループもフラグメントから探索することが特徴です。一方パラメトリックデザインでは、フラグメント間をつなぐループを後から閉じる工程が必要になります。KICは既知構造ライブラリが不要のデザイン手法、SEWINGはタンパク質構造をグラフベースで表現しながらデザインすることが特徴です。

構造から配列生成するために、RosettaではPackerと呼ばれるアルゴリズムを利用します。これは側鎖配置をシミュレーテッドアニーリング法で最適化する方法論です。ロータマーから配列を、エネルギースコアを指標に探索していきます。

より現実的な配列に近づけるために、探索する配列に制限をかけることが一般的なのですが、その制限方法として、以下に示す方法が存在します。

  • レイヤデザイン:溶媒露出の程度を3種類(コア、表面、結合面)に分解して、それぞれに対応するアミノ酸配列を制限
  • コンセンサスループデザイン:天然配列の出現頻度に基づく制限
  • HBNet:水素結合ネットワークに基づく制限
  • アミノ酸組成の制約:全体のアミノ酸組成の割合(疎水性残基:極性残基など)を制限
  • ジスルフィド探索:ジスルフィド結合の位置を同定
  • カスタムセレクション:特定の構造(β-bulgeなど)において出現しやすいアミノ酸配列に制限

デザインされた配列や構造は、その妥当性を別の視点から評価することで洗練されます。一般的には部位ごとにフラグメント単位でRMSDを計算し、低い値を示すことを確認したり、全体構造のRMSDとトータルスコアをデザイン構造ごとにプロットしてその相関を評価することで、エネルギー極小な構造に向けて最適化されているかを確認したりします。

それ以外の評価手法としては、

  • Ramachandran分布
  • ABEGO
  • GenKIC
  • TERMs
  • MDシミュレーション

などの手法が紹介されていました。

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