論文タイトル
Deep Generative Design of Epitope-Specific Binding Proteins by Latent Conformation Optimization
出典

確認したいこと
深層学習を利用した、タンパク質構造予測・デザイン手法をベンチマークしています。
要旨
深層生成モデルを利用して、Monobody型のバインダーをデザインする手法”Sculptor”を紹介した論文です。
解説など
筆者らは、この手法を公開する前にバインダーデザインの要素技術である以下の2つの技術を報告しています。
タンパク質(抗体)構造生成:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.08.07.242347v2
配列設計:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35136054/
前者のIg-VAEについては過去の記事でも紹介しました。
これらの技術に、抗原相互作用領域の選定や、構造最適化ループの手順を組み合わせることで、バインダーのデザインへ応用しています。筆者らはこの一連をアルゴリズムを”Sculptor”と呼んでいます。
標的抗原におけるエピトープの同定には、Arpeggioという相互作用解析ツールをPDBデータに適用した情報を活用しています。
構造生成初期には、以下の3つに関わるパラメータが初期化されます。
- VAEによる構造生成のための潜在ベクトル
- バインダーの3次元座標を記述する”Homolenous transformation”
- 相互作用領域のアサインメント
これらのパラメータは、Sculptorの最適化アルゴリズムによって最適化されます。この最適化には、以下の3つの技術が使用されています。
- gradient descent
- Metropolis-Hastings
- linear sum assignment
本手法の特徴を2つ挙げると、まずその1つに生成モデルの訓練データの生成が挙げられます。筆者らは34種のPDB登録データだけではなく、それらの構造からMDシミュレーションを行い、新たにデザインした160万もの構造データを活用しています。これにより密な構造空間から訓練されたモデルは、より精緻な構造を生成できると考えられます。
特徴の2つ目として、筆者らはMonobodyをデザインしています。Monobodyとはfibronectin3ベースの人工スキャフォールドです。結合界面はループ様の構造となっています。既存の手法だとヘリックスバンドル型のバインダーが多かったですが、ループデザインという観点で特異な技術です。
筆者らは毒素タンパク質に対するバインダーをこの手法でデザインし、酵母ディスプレイでスクリーニングすることで、ウェットで評価されたバインダーの同定に成功しています。
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