論文タイトル
Computational design of trimeric influenza-neutralizing proteins targeting the hemagglutinin receptor binding site
出典
Nat Biotechnol. 2017 Jul;35(7):667-671.

Computational design of trimeric influenza-neutralizing proteins targeting the hemagglutinin receptor binding site - PubMed
Many viral surface glycoproteins and cell surface receptors are homo-oligomers, and thus can potentially be targeted by geometrically matched homo-oligomers tha...
確認したいこと
タンパク質ベースのバインダーデザインについて、深層学習以前の手法開発の歴史をさかのぼって調査しています。この記事より数日間、主だった技術について紹介してみたいと思います。
要旨
多価抗原に対して同時に複数のエピトープに結合できるホモオリゴマーのデザイン手法を公開しています。
解説など
まずは、本バインダーデザイン手法の標的抗原であるインフルエンザのHAタンパク質について説明しましょう。インフルエンザウイルスの表面糖たんぱく質であるヘマグルチニン(HA)は、ウイルスが感染細胞と膜融合するのに必要なタンパク質であり、HAの中和分子はインフルエンザ治療薬として期待されます。HAは3量体として存在するため、中和活性を示すには、HAに対して高い結合率を示す必要があります。モダリティとしての抗体の結合価は2つしかなく、またその結合サイトは同時に結合できる幾何学的な配置ではないため、高結合率の達成には、天然にはない分子デザインが必要になります。
筆者らは、HAに結合できるモノマー分子を出発点として、HA3量体に同時に結合できるように、3つのモノマーを適切に配置したホモオリゴマー分子をデザインしました。具体的なデザイン戦略は以下のとおりです。
モノマーデザイン
- 中和抗体C05クローンのHCDR3セグメントを抽出
- H3セグメントの両末端に相同的なバックボーン配列を探索(1,718配列)
- バックボーン配列の該当領域をH3セグメントに置換
- 結合界面の形状相補性を指標に配列を設計
- “Low computed”かつHAとの相互作用エネルギーの大きいデザインを選抜(80 デザイン)
- 酵母ディスプレイでHA結合を指標に選抜
- HA結合の種交差性を指標に変異体を探索
ホモオリゴマーデザイン
- PDBからHA3量体に対して幾何学的に有利な配向を持つ構造をサンプリング
- HAとの界面において衝突する可能性のある残基を、別のアミノ酸残基に置換
- モノマー間のギャップをGlySerリンカーで閉じた(9デザイン)
H3のグラフティングによるデノボスキャフォールドのバインダーデザインと、”avidity”オリゴマーのデザインの実施例として、参考になる論文です。
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