論文タイトル
A computationally designed inhibitor of an Epstein-Barr viral Bcl-2 protein induces apoptosis in infected cells
出典
Cell. 2014 Jun 19;157(7):1644-1656.

確認したいこと
タンパク質ベースのバインダーデザインについて、深層学習以前の手法開発の歴史をさかのぼって調査しています。今回と次の記事で、Bcl-2バインダーデザインの報告をピックアップして紹介します。
要旨
本論文は、Bcl-2ホモログであるBHRF1に対するバインダーデザインを報告した論文です。FFLを利用して、天然の結合モチーフをグラフティングするアプローチでタンパク質をデザインしています。
解説など
Bcl-2ホモログであるBHRF1は、エプスタインバーウイルス(EBV)がコードする遺伝子です。アポトーシス促進性の遺伝子であるBakと相互作用して機能を阻害することで、感染細胞のアポトーシスを抑制します。このBHRF1に対するバインダーを本論文ではデザインしています。
BHRF1とBak(またはその他のBcl-2ファミリータンパク質)との相互作用には、BH3モチーフを介していることが知られています。筆者らは、このBH3を結合界面として、新規のスキャフォールドタンパク質をデザインすることを試みています。このモチーフのグラフティングには、過去の記事で紹介したFFLが利用されています。
具体的なデザインの流れは、下記のとおりです。
- BHRF1とBim-1のBH3ヘリックスの複合体構造を抽出
- PDBから取得したフラグメント構造からヘリックスバンドル構造を組み立てる
- 配列設計と構造最小化を反復して実行する
- Bim-BH3モチーフとのアライメントにより、設計ヘリックスバンドルをBHRF1にドッキング
- 周囲の界面残基を、単量体の安定性と抗原との相補性を指標に最適化
- 少数の候補デザインを手動で修正
- 大腸菌で発現し、可溶性のあるデザインを選抜
- 酵母ディスプレイでBHRF1との親和性を評価
2~3の工程でFFLの手法を使用しています。
得られたタンパク質は、繰り返し変異導入による最適化をを行い、親和性や特異性、安定性を改善して、最終的にBIND1と呼ぶ分子を取得しています。
本手法以前では、FFLはウイルスエピトープを利用したワクチンデザインへの実施例が主でしたので、天然結合モチーフのグラフティングという新規な応用例として、本論文は価値があると思います。
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