論文タイトル
Design of Antigen-Specific Antibody CDRH3 Sequences Using AI and Germline-Based Templates
出典

要旨
IgLM を用いた抗原結合抗体デザインの実施例です。
解説など
本論文における抗原結合抗体デザインの特徴は、標的抗原の構造とともに、それに結合することが既知の抗体のジャームライン情報を活用することにあります。特定のウイルス抗原に対する抗体価が上昇する際に、複数の動物個体間で同一のジャームラインが出現する、ということはよくあります。これは特定のジャームラインそのものが標的とする抗原への結合に寄与していることを表しています。本論文ではこのようなジャームライン情報を利用して、抗原結合抗体のデザインを試みています。
この文献では、実施例として、SARS-Cov-2 のスパイクタンパク質に対するバインダーをデザインしています。デザインの鋳型に用いたジャームラインは VH5-53 です。
デザインの具体的な手法はつぎのとおりです。まず、IgLM でおよそ 1000 配列の H3 配列をデザインします。
本論文におけるデザイン対象は、HCDR3のみです。生成される配列のアミノ酸残基と長さは多様です。これらデザイン配列群を、ImmuneBuilder の NanoBodyBuilder2 モードでモデリングし、鋳型のジャームライン構造と構造が近い配列を選抜します。
選抜された 14 種の構造をウェットの評価に進めたところ、うち 2 種の配列で ELISA により結合活性が確認されたとのことです。
既存の手法の組み合わせで、結果を出している点は素晴らしく、どのような点がこの成績に寄与しているのか、他の抗原での実施例も含めて確認してみたく感じます。