論文タイトル
Evolutionary constraints guide AlphaFold2 prediction of alternative conformations and inform rational mutation design
出典
要旨
AlphaFold2(AF2)を使ってタンパク質の異なる構造状態(とくにフォールドスイッチ)を予測し、それを安定化させるための変異を設計する手法を提案・検証した論文です。
解説など
本ブログでは過去に多状態構造を予測する手法を紹介しました。
多状態構造を予測するための既存のアプローチは、大きく以下の2つに大別されます。
- 予測モデルの訓練データやフレームワークに変更を加える方法
 - 入力するMSAを修正する方法
 
上記のブログ記事で紹介した AF-Cluster は後者の代表的な手法です。今回の記事で紹介する手法はこの AF-Cluster をベースに手法を改善しています。AF-Cluster は MSA配列をクラスタリングして、個別のクラスタを入力に使用することで、クラスタごとに異なる構造が予測されることを期待する方法です。AF-Cluster ではクラスタリングに DBSCAN を活用していますが、クラスタサイズが小さくなる傾向があり、予測が非効率となることが課題でした。
本研究では、MSA Transformer の埋め込みと階層型クラスタリング(AHC)を導入したことが大きな特徴です。既知のフォールドスイッチタンパク質で、本手法を実行すると DBSCAN に比べて安定して高信頼性の予測構造が得られることを実証しています。
また筆者らは、DCA (Direct Coupling Analysis) を活用することで、フォールドスイッチタンパク質の特定の構造を安定化させる変異候補を提案する手法を開発しています。DCAは、MSA から共進化しているアミノ酸残基ペアを推定する統計的手法です。特に、物理的に接触している残基ペアを予測するのに非常に有効で、構造予測や機能部位の同定に使われます。
実際に、DCAで提案した改変をMDで評価したところ、野生型に比べて安定化することを確認しています。

  
  
  
  

