【抗体デザイン】Hallucination 型の抗体デノボデザイン手法 Germinal を紹介!

論文タイトル

Efficient generation of epitope-targeted de novo antibodies with Germinal

出典

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要旨

新しい抗体デザインフレームワーク「Germinal」 の開発と実験的検証を報告した論文です。

解説など

抗体スキャフォールドのデノボ設計かつオープンソースの手法は少なく、RFantibodyはその代表例です。

本論文で紹介された「Germinal」は、RFantibodyのような拡散モデルベースの手法ではなく、BindCraft に代表される AlphaFold-Multimer を利用した Hallucination 型の生成手法になります。

Germinal の概要

  • Germinalは 構造予測モデル AlphaFold-Multimer (AF-M) と 抗体特化言語モデル IgLM を統合した新しい生成フレームワーク。
  • 具体的には:
    • AF-M → 標的抗原との複合体構造を予測し、iPAEを指標にCDRがエピトープに正しく結合するように誘導
    • IgLM → 自然抗体に近いCDR配列を生成するようにモデルの対数尤度バイアスをかける
  • 双方の勾配(gradient)を同時に最適化し、「構造的に妥当」かつ「自然抗体に近い」配列を生み出す

具体的には、Germinal は 3段階のパイプラインで構成されます:

  1. デザイン段階(構造 × 配列の同時最適化)
  2. 配列最適化段階(安定性の改善)
  3. フィルタリング段階(再予測とスコア評価)

1. デザイン段階:構造・配列の同時最適化

  • 入力
    • 標的抗原の構造(多くの場合 AlphaFold3 予測構造を使用)
    • 抗体のフレームワーク構造(既知の安定枠組み)
    • 設計対象は CDRループのみ、フレームワークは固定。
  • 勾配ベースの最適化
    • AF-M: 複合体構造を予測し、CDRが標的エピトープに結合するように評価。
    • IgLM: 自然抗体配列に近いCDRを高スコア化。
    • 両者の勾配を同時に計算し、シーケンスを更新(勾配反転による “inversion of AF-M” の発展版)。
  • カスタム損失関数(loss functions)
    1. Paratope loss: CDR残基が主に結合界面を形成し、フレームワーク残基が直接結合に寄与しないよう制御。
    2. Secondary structure loss: CDRがα-ヘリックスやβストランドに偏らず、柔軟なループ構造を取るよう誘導。
      • これは天然抗体CDRの柔軟性(高特異性や広い認識能に寄与)を再現するため。
  • 探索方法
    • 「Logits → Softmax(温度アニーリング) → Semi-greedy」の三相プロセスで配列をサンプリング。
    • これにより、初期は多様な配列を探索し、徐々に高スコア解に収束。

2. 配列最適化段階:安定性と発現性の向上

  • AbMPNN(ProteinMPNN の抗体特化版)を利用。
  • 役割:抗原と直接接触しないCDR残基をリデザインして、安定性を改善。

3. フィルタリング段階:再評価とスコア付け

  • AlphaFold3 (AF3) で設計した抗体–抗原複合体を再予測し、AF-M設計バイアスを避ける。
  • PyRosetta を用いて以下のスコアを計算:
    • interface ΔΔG
    • 接触残基数
    • 水素結合数
    • SASA(溶媒接触面積)など
  • これらを総合的に評価し、最終的な候補を数十件に絞る。

後述する論文内での実施例では、1,000 前後の独立した trajectory から各代表モデルを1つずつ選抜し、各モデルに対して1配列ずつ AbMPNN で最適化しています。これをフィルタリングで数十件まで絞るというスケール感でデザインが進行します。

主な成果

本文では、4つの標的抗原(PD-L1, IL3, IL20, EBV由来BHRF1)に対して検証しています。1標的あたり 43–101 デザイン を実験確認するだけで、4–22% の成功率でナノモル親和性のナノボディを得ることに成功しています。

  • 代表的な結合親和性(KD値):
    • PD-L1 → 170 nM
    • IL3 → 560 nM
    • IL20 → 190 nM
    • BHRF1 → 140 nM

コードはこちら。

GitHub - SantiagoMille/germinal: Codebase for Germinal, a broadly enabling generative pipeline for efficient generation of epitope-targeted de novo antibodies.
Codebase for Germinal, a broadly enabling generative pipeline for efficient generation of epitope-targeted de novo antibodies. - SantiagoMille/germinal