論文タイトル
AlphaFold encodes the principles to identify high affinity peptide binders
出典

確認したいこと
- AlphaFoldを利用したタンパク質デザイン事例
要旨
AlphaFoldを利用して、分子の競合的な結合の確認や、競合分子同士の親和性比較ができることを示した論文です。
解説など
本論文は、AlphaFoldを使用して、複数のペプチド分子から標的タンパク質に対して高親和性のペプチドを同定できることを示した論文です。
AlphaFoldを利用して、複合体の構造を予測できることは以前から知られています。2つの分子を別の鎖として配列を入力すれば、結合様式を予測できるかぎり、複合体として構造モデルを出力することができます。
この2者複合体に、競合的に結合する第3の分子を同時に入力したらどうなるでしょうか。
親和性の高い分子が、親和性の低い分子を押しのけ複合体を形成するはずです。これを競合結合試験に応用したのが本手法になります。
さっそく、具体的な手法について、みてみましょう。
手法について
まず、標的とする受容体と、それに競合的に結合する2つのペプチドが存在する状況を想定します。
このとき以下のとおりに鎖を分けて配列を定義し、AlphaFoldで構造モデルを生成します。
[peptide0]:[receptor]:[peptide1]
このとき、
[peptide0]:[receptor]の結合界面中心の座標をc1*、
[peptide1]:[receptor]の結合界面中心の座標をc2* とします。
各ペプチドと受容体の2者複合体の結合界面中心座標をc1, c2とすると、3者複合体モデルと2者複合体モデルの界面中心座標のずれは、
|c1-c1*|, |c2-c2*| と定義されます。
従って、この差分が小さいほうが高親和性ペプチドであると考えられます。
検証結果について
本論文では、以下の2種類のタンパク質を標的として利用しています。
- bromo and extraterminal domain proteins (BET)のETドメイン
- MDM2/MDMX
これらに結合する親和性既知のペプチドを複数用意して、複合体構造モデルを出力して解析を進めています。
検証の結果、実測値と同様な親和性に基づくペプチドの順位付けが、本手法によってできることが示されました。
一方、本手法の課題としては、以下が挙げられます。
- ペプチド配列の類似性が乏しいと、競合結合を正確に評価できない
- コイル構造を有する結合界面では精度が低い(MHC-peptide複合体で実証)
- 同等の結合親和性をもつペプチドどうしでは、解析精度が落ちる
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