論文タイトル
ProtAff: Protein Binding Affinity Prediction via LoRA-Finetuned ESM-2
出典
要旨
本研究では、タンパク質配列のみを入力として結合親和性をランキングするモデル「ProtAff」を提案し、既存の構造予測モデルの信頼度指標や既存の機械学習モデルを上回る性能を示しました。
解説など
Gray Labからのレポートです。著者らは、タンパク質配列のみから結合親和性を予測する新しいモデル「ProtAff」を開発しました。抗原結合を予測するモデルには、その目的に応じていくつかのカテゴリに分類されます。
- Co-folding モデル:AF3、Boltzなど
- binder / non-binder 予測:PLM-interact、AntiBinder、PPLMなど
- ΔΔG予測:DDAffinity
- Affinity 回帰予測:MINT、CrossAffinity、AlphaBindなど
- Affinity 順位予測:AbRankなど
この中でProtAffは、Affinity順位予測に該当する予測モデルです。
ProtAffモデルの特徴
1. 大規模な親和性データセットを構築
AbRankを含む、既存の予測モデルはその学習データの性質から類似性の高い配列データに偏ってしまうという課題がありました。そこで著者らは、AbRank、ASD、PPB-Affinityの3つの統合データベースからデータを収集し、
- 362,567件の親和性測定データ
- 308,854種類のバインダー
- 10,949種類の標的タンパク質
からなる大規模学習データセットを構築しました。
2. ESM-2をLoRAで微調整
ProtAffの基盤モデルには、650Mパラメータを持つタンパク質言語モデル(Protein Language Model, PLM)であるESM-2を使用しています。
ESM-2全体を再学習するのではなく、最後の4層に対してLoRA(Low-Rank Adaptation)を適用しました。
3. Cross-Attentionでバインダーと標的の関係を表現
バインダー配列と標的配列はそれぞれESM-2でエンコードされます。
その後、
- バインダー表現をQuery(Q)
- 標的表現をKey(K)・Value(V)
としてCross-Attentionを行います。
これは、「固定された標的に対して複数の候補バインダーをランキングする」という設計タスクの非対称性を反映した構造になっています。最終的にMLPヘッドが1つのスカラー値として親和性スコアを出力します。
4. 回帰ではなくランキング学習を採用
本研究では、通常の平均二乗誤差(MSE)回帰ではなく、Margin Ranking Lossを採用しています。
異なる実験系由来の親和性データは絶対値のスケールが揃っていないため、
- 「AはBより強く結合する」
という順序情報のみを学習する方が適切であると考えられました。
結果
EGFRベンチマークで既存手法を上回る性能
AdaptyvBio EGFRベンチマーク(N=55)では、実験値とのSpearman順位相関係数として、
- ProtAff:ρ = 0.413
- MINT:ρ = 0.242
- CrossAffinity:ρ = 0.216
- AF3最良指標(ipSAE):ρ = 0.054
- Boltz-2最良指標:ρ = -0.046
が報告されています。これはEGFR関連のデータリークを避けた検証結果です。
実際のバインダー設計でも有効性を確認
著者らはAdaptyvBioのNipah virus binder design competitionにもProtAffを適用しました。
1E5 Fab抗体を出発点として、
- AntiBERTyで変異候補を生成
- AntiBERTyとIgLMで100候補へ絞り込み
- ProtAffで親和性ランキング
という3段階パイプラインを構築しました。
その結果、5つの提出デザインのうち2つで結合が確認され、最良のデザインは
KD = 1.32 × 10^-10 M(131.6 pM)
を示しました。
本論文の示唆的なところは、ProtAffでは、単一標的に対するバインダーの結合順位はつけられるが、標的横断的な特異性予測は苦手という点です。この問題設定では Co-folding モデルの方が良い成績を収めており、AF3との相補的な特徴があることを示しています。

