論文タイトル
Principles for computational design of binding antibodies
出典
Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Oct 10;114(41):10900-10905.

確認したいこと
- AbDesignの利用実績
要旨
in silicoで標的抗原に結合する抗体をデザインするシステム AbDesignを、2種の標的抗原に対して適応した事例を紹介しています。
解説など
AbDesignの詳細な仕様は、先日のブログで紹介しています。
主に以下の点について、原著論文と比べて詳細に解析されていました。
- 設計とデザインの反復試験による逐次の抗体分子最適化
- デザイン制約の変更による影響を評価
- 発現量と抗原結合親和性を実測して評価
標的抗原としては、ヒトインスリンと結核菌アシルキャリアタンパク質(ACP)の2つを選択しています。デザインしたタンパクはまず、scFvフォーマットで酵母にディスプレイされ、クローンごとに染色して、フローサイトメーターで発現量や抗原結合を確認しています。
デザインサイクルを3回まで繰り返した時点での課題は、デザインした抗体の発現量でした(原著論文 図1)。サイクルが進むごとに発現量は改善する傾向にありますが、全く発現しないクローンが提案配列の中に含まれています。この原因として、筆者らは以下の仮説を立てました。
- Fvの構造コア内部に、相互作用を示さない空洞が存在する
- 望ましくない電荷相互作用ペアが、構造の内部に存在する
この課題を解決するために、天然の抗体配列レパトアのPSSMを算出して、これを配列選択の制約条件とすることを、デザインの4サイクル目で試みています。これにより、発現量が大幅に改善したと主張しています。
また、これまでFv骨格を、6つのCDRとフレームワーク(FR)の計7種類にセグメント化していましたが、CDRとFR間で構造的な欠陥が確認されたため、重鎖、軽鎖それぞれCDR1とCDR2を統合したフラグメント定義に変更しました。これを5サイクル目に適用することで、発現量が均一に高いレベルを示すことができています。
4・5ラウンドにおけるデザイン指標の変更案は、原著論文にも記載があったので、時系列的にはこちらのデータ取得が経緯として先だった、ということでしょうか。
単離された抗体の抗原結合性は弱かったためか、筆者らはデザインした配列にエラープローンPCRによりランダム変異を導入して、高親和性のクローンを単離しています。最適化後の抗体は、最も強いものでKD = 30 nMであったとのことです。導入された変異はFRに存在するケースが多かったと示されています。
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