論文タイトル
Computational de novo design of antibodies binding to a peptide with high affinity
出典
Biotechnol Bioeng. 2017 Jun;114(6):1331-1342.

確認したいこと
- OptMAVEnのウェット検証を含む評価事例
要旨
抗体のデザインツールであるOptMAVEnを用いて、ドデカペプチドを認識するscFvを探索した報告です。
解説など
先日に紹介したOptMAVEn-2.0の論文では、デザインした抗体の抗原結合性を、ウェットで評価したデータがありませんでした。
旧バージョンのOptMAVEnではありますが、結合親和性を定量的に評価した結果を示す論文がありましたので、この記事で追加で紹介します。
本研究では標的抗原として、ドデカペプチド(DVFYPYPYASGS)を対象としています。この抗原は、抗原の調製が容易であること、scFv(クローン名:2D10)との複合体共結晶構造が解かれていること、scFvを大腸菌で調製できることなどの理由から、標的として選択されています。
この抗原に対して結合する抗体をin silicoで設計し、scFv-1~5の5つのクローンを選抜しています。
選抜された検体の体細胞突然変異数は、生体のそれと同等レベルであったとのことです。
これらの抗原結合性を実験により確認すると、5つ中3つは結合を示しました。またそれらのKDは、8.9~23.8 nMでした。
デザインした抗体のアミノ酸の特徴をみてみると、Asp, Glu, Gly, Lys, Argは他のアミノ酸より多く生じ、Ala, Asn, Ile, Leu, Thr, Tyrの頻度は低い結果でした。最も著しいのは芳香族残基、特にチロシンの劇的な減少で、この結果は天然の抗体の性質と同様とのことです。
また、高親和性抗体の配列は、荷電残基が優位に存在していました。一方で脂肪族および非極性残基は減少傾向にあります。
本文の考察では、不連続なエピトープを認識する抗体をデザインすることは、いまだ課題があると言及されています。大きいタンパク質やマルチドメインをもつタンパク質などもこれに該当するでしょう。
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