【RFDiffusion】Baker 研から極性かつβストランドエピトープに対する新規バインダーデザイン手法を発表

論文タイトル

Improved protein binder design using beta-pairing targeted RFdiffusion

出典

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.10.11.617496v1

要旨

Baker 研から β ストランドエピトープに対するバインダーデザインの手法を紹介した論文です。

解説など

一般に極性残基や β ストランド形状の標的エピトープに対するバインダーデザインは困難であることが知られています。β ストランドー β ストランド間の相互作用は水素結合が中心的な役割を果たし、精緻な側鎖原子の配向制御が必要ですし、そもそも β ストランド構造は non-canonical であることが多いことがその理由です。

Baker 研からは先日もこの課題に対する解決策の一つが示され、このブログでも紹介しました。

これに対して今回紹介する手法は、まったく異なるアプローチから本課題の解決を試みています。具体的には既知のβストランド相互作用情報を活用して RFDiffusion を条件付けする方法です。筆者らは既知のタンパク質分子内に含まれるβストランドペアを活用し、

  • secondary structure
  • secondary structure block-adjacency (分子内の2次構造単位のペア情報)

の2つの情報で、RFDiffusion に条件づけさせて構造を生成しています。

筆者らは、この手法で以下の7つの抗原のβストランドエピトープに対するバインダーデザインを試みています。

  • ALK-2
  • ALK-3
  • PDGFRα
  • KIT
  • FCRL5
  • NRP1
  • α-CTX

RFDiffusionで 500 の主鎖構造を生成した後は、ProteinMPNN で各構造に対して 10 配列を設計し、AF2 pAE と Rosetta ΔΔG でデザインの妥当性を評価しています。

今回開発した “interface conditioning method” と従来の “standard hotspot directed method” で性能比較をすると、in silico success rate が 0.98% → 9.2% に改善したとのことです。また新規手法では globular な構造が 88.7 % を占め、明らかに従来法と比べてαヘリカルバンドル構造の生成頻度が減少していることが分かります。

生成されたデザインは、100 – 100,000 個を酵母ディスプレイで評価し、各抗原について sub nM の親和性のバインダーがデザインできることが示されました。いずれのバインダーも標的抗原特異的に結合しています。生成されたβストランドのサイズと自己凝集性には相関がなく、モノマータンパク質を高頻度に生成できることも特徴です。

本手法はまだコードベースでは公開されていませんが、多様な抗原で成功を収めていることから実用的なアプローチとして期待されます。