論文タイトル
De novo design and structure of a peptide-centric TCR mimic binding module
出典

要旨
peptide-MHC に対するバインダーをデノボで設計した実施例の紹介です。
解説など
本ブログでもこれまで peptide-MHC に対するバインダーデザインの実施例を紹介してきました。
これを踏まえて本論文でのバインダーデザインアプローチを見ていきます。デザインプロセスは次のとおりです。
- 80-100 残基のモノマーフォールドを 50 個 RFDiffusion で生成
- 対称性をもちパッキングの優れた 99 残基長のヘリカルバンドル1種類をテンプレートとして選抜
- peptide-MHC に対するバインダーの骨格構造 100個を RFDiffusion で生成
- 選抜した鋳型フォールドで Fold-conditioning
- 鋳型フォールドのループ構造はマスクして構造を再生成
- ホットスポット: Met4, Trp5, Thr7, Gln8
- 各モデルについて 6 種の配列を ProteinMPNN で生成
- AF2 で複合体モデルを予測し、iPAE <10 のデザインを選抜
- 選抜したヒットデザインに対して 500 配列を ProteinMPNN で配列設計
- AF2 で複合体モデルを予測し、iPAE でデザインを選抜
最初に望みのバックボーン構造を選抜してそのフォールドを中心にバインダーを設計するアプローチを採用しています。筆者らは既存の抗体や native TCR ベースのスキャフォールドに比べてリジッドなスキャフォールドを使用した方が、標的ペプチドに対して特異性が出しやすいと考えています。またスキャフォールドのコンパクトさは T cell engager としての活用に重要な要素であると考えて、選抜基準として重要視しています。
モデル抗原として、NY-ESO-1 を選んでいます。最終的に設計した配列のうち iPAE 指標で優れた 5 配列をウェットの評価に進め、うち2デザインが標的特異的な結合活性をもつことを明らかにしました。
ペプチドに対する配列特異性評価のため、ペプチド抗原側を ProteinMPNN で再設計することで標的と類似の構造を示すバリアントを NLLで評価し、MHC Motif Atlas に登録された既知提示ペプチドの情報と合わせて、評価すべき配列を選定しています。
最終的に得られたバインダーは、native TCR や既知抗体と比べて、結合界面の面積が広く多くの表面残基を活用して抗原に結合していることが分かりました。デノボスキャフォールドのバインダーとしての有用性も示された結果です。